1989 Fiscal Year Annual Research Report
現状に即した高齢者の知的機能測定法の開発ー内観法及び観察法の比較検討
Project/Area Number |
63480180
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
武田 真太郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70073690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 和久 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (50124889)
松本 健治 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10073694)
吉田 義昭 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (40174958)
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Keywords | 高齢者 / 知能 / 心理尺度 / 精神病院 |
Research Abstract |
本年度は和歌山市内にモデル地区を設定し、昨年度に作成したスケ-ルの内的整合性、妥当性について検討するための調査を行ったが、在宅痴呆患者を抱える世帯が少ないこと、しかも調査に応じることを拒否する例が多かったことのために統計的処理に耐えうるデ-タにはならなかった。そこで、調査対象を精神科病院入院中の高齢患者とその病院に勤務する看護者に拡げ、スケ-ル応用範囲の拡大を図った。その結果、精神科病院における「外面的な」知的機能(SI)は近時記銘能力に大きく依存していたが、養護老人ホ-ムに比べてその寄与率は低かった。また、ADLはほとんどSIに寄与せず、老年精神科依存性尺度中の「妄想、幻覚」や「暴言、積極的反抗」は特別養護老人ホ-ムにおけるSIと比較して、小さな寄与率を示した。SIを目的変数とした数量化分析における最終的な相関比は養護・特別養護老人ホ-ムと比べて低かった。 以上の結果は精神科病院入院患者の特性に由来するものと思われる。すなわち、ADLのSIに対する寄与率の低下は、看護者はまず患者の精神状態の把握を要求されることによって説明できる。また、近時記銘能力、「妄想、幻覚」といったアイテムの寄与率の低下は入院患者の大多数をを精神分裂病で占め、看護者は二次的な知的能力低下(意欲低下による情報処理能力の低下)や精神分裂病の陽性症状を見慣れていることに起因しているのであろう。相関比の低下はこの2つの要因によるものであるが、高齢化した精神分裂病と老人性痴呆の概念規定を看護者に対して再教育することによって説明変数が変化してくるものと思われる。 前年度に報告したように評価者の立場によってSIが変化することが今年度の研究でも確認された。また、実際のフィ-ルド場面での頻度は少ないであろうが、痴呆類似症状を呈する疾患に関する情報を一般住民に提供することがSIの妥当性を高める可能性が示唆された。
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[Publications] 吉田義昭 他: "在宅高齢者の知的機能に関連する因子ー4年後のコホ-ト研究ー" 日本衛生学雑誌(第59回日本衛生学会総会). 44(1). 412 (1989)
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[Publications] 森岡郁晴 他: "ボケ度評価に関連する因子についての研究" 日本公衆衛生雑誌特別附録(第48回日本公衆衛生学会総会抄録集II). 36(10). 596 (1989)
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[Publications] 吉田義昭 他: "施設内高齢者のボケ度に関連する因子について" 和歌山医学. 40(1). 105-114 (1990)