1988 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌発生に及ぼすディーゼル排ガスの影響:乳幼仔期の一定機関ばく露の影響及び高感度動物によるばく露実験
Project/Area Number |
63480182
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
竹本 和夫 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50049764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田切 陽一 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (20152506)
片山 博雄 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (20049810)
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Keywords | ディーゼル排気ガス / 肺腫瘍 / マウス(C57BL、B6C3F) / 新生仔 |
Research Abstract |
ディーゼルエンジンの排ガスは多環芳香族炭化水素、ニトロアレン類などの発癌物質を多量に含み、マウス、ラット等での動物吸入実験による肺腫瘍発生も一部で報告されている。しかしながら、一定機関のばく露後の呼吸器(気管、気管支、肺実質)病変についての詳細な検討はなく、若年時からの発癌刺激が後年に修復されるか、発癌するかについては明らかではない。本年度は、肺腫瘍嫌発系マウス(C57BL/6N)への新生仔期から9カ月間の吸入暴露実験を行い、以降は一般飼育条件下で放置し、最長30カ月までの肺腫瘍発生について検討した。 方法としては、生後24時間以内のC57BL/6Nマウス、雌雄を用い、新生仔期より、週4日、1日4時間、小型でィーゼルエンジン排ガス(粒子状物質:2〜4mg/m^3、NO_2:2〜4ppm、CO40〜100ppm)を吸入暴露した。9カ月以後放置された匹数は、対照無処置群、雄60、雌60、計109匹、暴露群、雄62、雌64、計126匹であった。 〔結果の概要〕9カ月で両側肺胸膜に針頭大からゴマ粒大の集蔟性黒色斑点がみられ、以降放置飼育によっても粉じん沈着量は変化を認めない。組織学的には、最長放置期間20カ月でも黒色粉じんは肺胞膣内マクロファージに貧喰され存在し、又II型肺胞上皮の増生を認めた。肺腫瘍は、対照群の雄に1例の良性腺腫を認めたのに対し、暴露群では、雌2例に腺腫、雄4例に腺腫を認め、そのうち雄での2例は組織学的に悪性化を示すものであった。 以上の結果は、幼若、若齢期のディーゼル排ガス暴露が老齢期の肺腫瘍発生を起こす原因であることを示唆しているが、現在、マウス系統を、B6C3F_1(C57BL/6NX C3H/HeN)とし同様の実験を行っている他、同系マウスの経胎盤的な弱イニシエーションに対する排ガス吸入の促進的作用の有無についても検討を開始した。
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