ヒト小細胞肺癌に対するモノクロナル抗体を用いた癌免疫療法の試み

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 63480210
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 川瀬 一郎 大阪大学, 医学部, 助手 (10161324)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 谷尾 吉郎 大阪大学, 医学部, 助手 (50197521) ; 原 秀樹 大阪大学, 医学部, 助手 (10208655) ; 井上 保 大阪大学, 健康体育部, 助手 (00203240)
• Keywords: 小細胞肺癌 / モノクロナル抗体 / 抗体依存性細胞傷害 / イムノトキシン

Research Abstract

研究実績
1.気管支鏡下生検で得られた小細胞肺癌組織から、4種類の小細胞肺癌培養株を樹立した。そのうち化学療法や放射線療法に抵抗性であった患者の小細胞肺癌培養株でBALB/cマウスを免疫し、その脾細胞をマウスミエローマと融合させ多数のハイブリドーマを作成した。そのなかから、化学療法や放射線療法に抵抗性の小細胞肺癌のみならずこれらの治療に良い感受性を示す小細胞肺癌やH69、N231、N857などの既存の小細胞肺癌培養株にも結合するモノクロナル抗合(MoAb)を得た。このMoAbは、肺の腺癌、扁平上皮癌、巨大細胞癌や造血器系腫瘍には結合しないが、神経系腫瘍、正常神経組織や副腎結織には結合することから、いわゆるクラスターIに分類されうるMoAbであった。
2.このMoAbはIgG1であり、ヒト末梢血由来のLAK細胞を攻撃細胞とした場合、小細胞肺癌細胞に対し中等度の抗体依存性細胞傷害を誘導した。
3.このMoAbが認識する抗原を解析すべく、小細胞肺癌の膜画分をSDS-PAGEで展開した後nitrocellulose膜に転写し免疫染色した結果(Western blotting)、との抗原の分子量は62〜66kDaであった。Affinity calumnで精製した抗原を蛋白分解酵素、糖鎖分解酵素やperiodateで処理するとこのMoAbが結合しなくなることから、この抗原は糖蛋白質であることが判明した。
4.このMoAbにricinAを結合させてimmunotoxinを作成し、その細胞傷害能をin vitroで検討した結果、この抗原を保持している細胞に対し強力な細胞傷害を発揮することが認められた。
今後の研究の展開
自下さらに多くの抗小細胞肺癌MoAbを得つつあり、これらを用いて臨床的予後の差異を反映した小細胞肺癌の亜分類の試み、抗体依存性細胞傷害やimmunotoxinによる細胞傷害の抗腫瘍効果を検討していく。

Research Products

• [Publications] 横田総一郎: Cancer Immunol.Immunother.26. 11-17 (1988)
• [Publications] 川瀬一郎: Cancer Res.48. 1173-1179 (1988)
• [Publications] 細江重人: Cancer Immunol.Immunother.28. 116-122 (1989)
• [Publications] 谷尾吉郎: Cancer.
• [Publications] 原秀樹: Int.J.Cancer.
• [Publications] 井上保: 大阪大学医学雑誌.