1988 Fiscal Year Annual Research Report
小児好中球減少症の発症機序に基づいた造血因子療法の確立
Project/Area Number |
63480236
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小宮山 淳 信州大学, 医学部, 助教授 (50020798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 耕三 信州大学, 医学部, 助手 (90200493)
川合 博 信州大学, 医学部, 講師 (70126671)
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Keywords | 好中球減少症 / 顆粒球造血 / コロニー刺激因子 |
Research Abstract |
小児の慢性好中球減少症は、病因・病態など単一でなく、その解明とともに適切な治療法の開発が待たれている。本研究では、発症機構を解析し、造血因子の臨床的有用性につき検討中であり、これまでのところ下記のことが明らかになっている。 1.発症機構:(1)小児の慢性好中球減少症では、in vitroで検索するかぎり顆粒球造血は正常である。(2)とくに乳幼児の慢性好中球減少症では自己抗体が関与する頻度が高い。(3)遊走能低下を伴う好中球減少症(なまけもの白血球症候群)の一因として、自己抗体は重要と思われる。 2.造血因子による治療:これまでに造血因子(M-CSFまたはG-CSF)を投与し、その治療効果を検討中である。(1)M-CSFを28例に投与した。臨床効果の評価が可能であった19例中10例(52.6%)において好中球数が増加した。このうち5例では好中球数の増加は一過性であった。他の5例で数回の増減を繰り返し、2例は治療前の状態にもどったが、3例は完全に治癒した。臨床効果が認められた症例において、骨髄像の変動を検討した。M-CSF投与後に骨髄中の好中球系細胞の比率は増加し、その成熟が促進された。顆粒状・マクロファージ系前駆細胞(GM-CFC)数には変化なかった。治癒例における好中球数の正常化機構は今後の検討課題であるが、M-CSFにより好中球産生が高まり、末梢血中に好中球が増加した結果、自己抗体が吸収消費されたためとも思われる。2例に軽度の発熱、1例に注射部位の発赤が出現したが、とくに処置することなく治癒した。他の25例では身体的、検査上の副作用は観察されなかった。(2)G-CSFの効果は、現在5例につき検討中である。慢性好中球減少症のうち重症型の2例においても好中球数の増加が認められ、臨床効果は顕著である。ただG-CSFを中止すると、好中球数は速やかに投与前の値に復帰するため、剤型や投与法の工夫が必要であろう。
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[Publications] Komiyama,A.: Blood. 71. 41-45 (1988)
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[Publications] Yamazaki,M.: American Journal of Hematology. 27. 169-173 (1988)
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[Publications] Kawai,H.: American Journal of Hematology. 28. 107-112 (1988)
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[Publications] Yasui,K.: Pediatric Research. 24. 442-446 (1988)
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[Publications] Komiyama,A.: Clinical and Experimental Immunology. 73. 500-504 (1988)
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[Publications] Yasui,K.: Antimicrobial Agents and Chemotherapy. 32. 1864-1868 (1988)
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[Publications] Kawai,H.: Transfusion. 28. 531-535 (1988)
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[Publications] Yabuhara,A.: Cancer. 63. 260-265 (1989)
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[Publications] Ichikawa,M.: Journal of Clinical and Laboratory Immunology.
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[Publications] Yamazaki,M.: Allergy and Clinical Immunology.
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[Publications] 小宮山淳: 臨床血液. 29. 1365-1370 (1988)
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[Publications] 青沼架佐賜: 日本小児血液学会雑誌. 2. 434-438 (1988)
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[Publications] 小宮山淳: 小児科. 29. 957-964 (1988)
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[Publications] 小宮山淳: 臨床医. 14. 1614-1618 (1988)
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[Publications] 小宮山淳: 病態生理.
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[Publications] 小宮山淳: 日本小児血液学会雑誌.
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[Publications] 小宮山淳: 小児医学.
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[Publications] 小宮山淳: 炎症.
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[Publications] 小宮山淳: "小児の治療マニュアル" 中外医学社, 333-342 (1988)