1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480238
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
沢田 淳 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (10079874)
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Keywords | 神経芽細胞腫 / 自然治癒 / 細胞分化 / Nーmyc / cーsrc / HLA classII抗原 |
Research Abstract |
神経芽腫の自然治癒において重要な過程である細胞分化について検討を行った。 1.分子生物学的検討として、神経芽腫細胞の分化過程におけるNーmycおよびcーsre遺伝子発現量の変化を観察した。神経芽腫細胞をレチノイン酸、ポリプレイン酸、サイクリックAMPで神経細胞へ分化させるとNーmyc発現量は減少し、cーsrc発現量は増加した。また、BrdUでシュワン細胞に分化させるとNーmyc、cーsrcともに発現量は減少した。以上の結果より、Nーmyc発現が神経芽腫細胞に分化に関連していること、またNーmycとcーsrc発現の増減が分化の方向性の決定に関与している可能性が考えられた。さらに、Nーmycの意義を明らかにするため、同一細胞株由来でNーmyc増幅・発現量の異なるクロ-ンを用いて増殖・分化能を検討した。Nーmyc増幅・発現の多いクロ-ンがコロニ-形成率、ヌ-ドマウス可移植性に優っており、Nーmycと腫瘍増殖能に関連が見出された。ポリプレイン酸による分化誘導に対しては、Nーmyc増幅・発現の少ないクロ-ンのみが神経細胞への分化を示したが、増殖抑制、Nーmyc発現量の減少は両クロ-ンにみられた。以上の結果より、Nーmyc増幅、発現量の低いクロ-ンは分化能が高いが、分化誘導に伴う発現量の減少は分化より増殖抑制に起因するものと考えられた。 2.神経芽腫細胞の分化とリンパ球分化抗原であるHLAclassII抗原量の変化について検討した。γーInterferon処理により神経芽腫細胞株5種全てで形態的分化が誘導され、2/5種でHLAclassII抗原の発現、増強が観察された。以上の結果より、神経芽腫細胞のHLAclassII抗原の被誘導能と細胞分化度または分化能との関連が示唆された、HLAclassII抗原は細胞傷害性リンパ球の認識抗原であり、宿主の細胞性免疫と自然治癒や予後との関連が推察され、今後の検討課題である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yoshihiro Horii: "Differential expression on N-myc and c-src protooncogenes during neuronal and schwannian differentiation of human neuroblastoma cells" International Journal of Cancer. 43. 305-309 (1989)
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[Publications] Tamaki Hino: "Diverse responses to retinoid in morphological differentiation,tumorigenesis and N-myc expression in human neuroblastoma sublines" International Journal of Cancer. 44. 286-291 (1989)
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[Publications] 黒田啓史: "同一患児の治療前後の骨髄転移巣より樹立した神経芽腫細胞腫(KP-N-AYとKP-N-AYR)" 医学のあゆみ. 148. 281-282 (1989)
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[Publications] 堀井由博: "ヒト神経芽腫細胞の分化過程におけるNーmycとcーsrc遺伝子の発現量の変化" 日本小児科学会雑誌. 93. 1317-1322 (1989)
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[Publications] 杉本徹: "γ-Interferonによるヒト神経芽腫のHLA classII抗原誘導の多様性" 日本小児科学会雑誌. 93. 2182-2188 (1989)
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[Publications] 日野玉喜: "神経芽腫の分化と増殖能ーNーmycの増幅と発現レベルの異なる2種のヒト神経芽腫サブクロ-ン株での検討" 日本小児科学会雑誌. 94. 208-212 (1990)
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[Publications] Tohru Sugimoto: "Differential susceptibility of HLA class II antigens induced by-interferon in human neuroblastoma cell lines" Cancer Research. 49. 1824-1828 (1989)