1990 Fiscal Year Annual Research Report
血友病の出生前診断に関する免疫・生化学的並びに分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
63480239
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉岡 章 奈良県立医科大学, 医学部・小児科, 助教授 (40106498)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
是澤 光彦 筑波大学, 医学部・臨床医学系・産婦人科, 講師 (60107703)
嶋 緑倫 奈良県立医科大学, 医学部・小児科, 講師 (30162663)
西野 正人 奈良県立医科大学, 医学部・小児科, 講師 (60164571)
|
Keywords | 血友病A / 血友病B / 出生前診断 / 胎児採血 / 第VIII因子 / 第IX因子 / 遺伝子診断 / RFLP(restriction fragment length polymorphism) |
Research Abstract |
1.胎児血採血による妊娠中期血友病A出生前診断:遺伝相談にて出生前診断を強く希望した保因者妊婦計33例(平成元年度報告25例を含む)について、まず、胎児の性別診断を行った。CVS/Y染色体特異DNAプロ-ブ(DYZ1)RFLPまたは羊水穿刺/染色体分析のいずれかにより33例中10例が女児と診断され、妊娠を継続した。男児23例は19〜21週に超音波断層誘導下に妊婦経腹壁的胎児肝臓(一部臍帯)採血を行い、0.5〜1.5mlの純胎児クエン酸加血を得た。血漿FVIII:CとFVIII:Agを定量し、6例は血友病Aと診断され、人工妊娠中絶後確認された。17例は非血友病と診断され、出生した。本法による血友病A出生前診断はほぼ安全、確実に行えるものと考えられる。 2.CVS/RFLPを用いた妊娠早期血友病A出生前診断:妊娠9〜11週の胎盤絨毛細胞を試料に、まず、Yプロ-ブにて性別診断を行い、同時に、2種類のFVIII遺伝子内RFLP,Bcl I/intron18とXba I/intron22を利用して9例(平成元年度報告1例を含む)の血友病A出生前診断を行った。9例中6例は女児(3例が保因者、3例が非保因者)で、妊娠を継続した。3例は男児で、うち2例が患者と診断され、人工妊娠中絶された。1例は非血友病で、妊娠を継続した。本法には種々の制約があるものの、妊娠早期に診断しうる利点がある。 3.血友病Bの出生前診断:6例の保因者の11胎児につき診断した。4例が女児で、自然流産した1例を除いた3例が妊娠を継続した。このうち2例は不連続Parcoll密度勾配法による男女生み分けによるものであった。7例が男児で、うち3例は胎児診断を受けることなく人工妊娠中絶された。4例は19〜21週に胎児採血を受け、2例は血友病と診断され、中絶された。2例は非血友病と診断され、妊娠を継続した。1例は正常であったが、残る1例は血友病Bであった。これは唯一の誤診例であった。
|
-
[Publications] 吉岡 章他6名: "凝固IX因子異常症" 臨床病理(臨時増刊). 特集第86号. 63-72 (1990)
-
[Publications] T.Nishimura et al.他10名: "Missense mutations in Factor IX Kashihara and Factor IX Niigata" Acta Haematologica Japonica. 53. 1030-1035 (1990)
-
[Publications] 吉岡 章: "血友病出生前診断の発展" 日本医事新報. 3429. 171-171 (1990)
-
[Publications] 吉岡 章: "血友病保因者の診断" 現代医療. 22増II. 182-186 (1990)
-
[Publications] 吉岡 章: "血友病研究の最近の進歩 遺伝子解析とその応用" 骨・関節・靭帯. 3. 431-442 (1990)
-
[Publications] 吉岡 章: "遺伝相談におけるインフォ-ムドコンセントー血友病遺伝相談を中心にー" ペリネイタルケア. 9. 869-874 (1990)
-
[Publications] 吉岡 章: "Annual Review 血液1990 V.5.異常第IX因子" 中外医学社, 9/216 (1990)
-
[Publications] 吉岡 章: "血液疾患診療マニュアル§5.3.血友病と類縁疾患" 中外医学社, 30/366 (1989)