1989 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆の発症、診断、治療に関する神経内分泌学的、神経化学的、行動薬理学的研究
Project/Area Number |
63480258
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
播口 之朗 大阪大学, 医学部, 助教授 (10028459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 雅俊 大阪大学, 医学部, 助手 (00179649)
多田 國利 大阪大学, 医学部, 講師 (80135681)
西村 健 大阪大学, 医学部, 教授 (70028455)
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Keywords | アルツハイマ-型痴呆 / 脳血管性痴呆 / ヒスタミン性神経修飾 / 微小菅蛋白付随蛋白質 / 痴呆モデル動物 / 乳頭体破壊 / 前脳基底部破壊 / カルシウム依存性中性蛋白分解酵素 |
Research Abstract |
1.ヒスタミンニュ-ロンの記憶・学習に及ぼす影響を検討する目的で、イボテン酸で乳頭体(MB)を破壊し、前脳基底部(BF)破壊ラットと加齢ラットの行動内分泌学的結果と比較検討した結果、(1)MB破壊ラットでは、記憶・学習の保持には障害はないが、獲得の障害が認められた。(2)BF破壊では視床下部・下垂体系のヒスタミン(HA)およびバゾプレッシン(VP)含量に変化はないが前頭葉皮質のcholine acetyl transferase(CAT)活性が低下していた。(3)MB破壊ラットでは脳内各部のCAT活性に変化なく、視床下部・下垂体系のHA、VPに変調が認められた。(4)加齢ラットではMB破壊ラットと類似した行動内分泌学的変化が認められた。 2.砂ネズミを用いて一過性脳虚血直後の微小菅蛋白の変化とその機序について検討した結果、(1)in vivoにおける虚血直後のMAP2分解パタ-ンは、in vitroでMAP2をカルシウム濃度依存性に分解させたパタ-ンと酷似していた。(2)同様のin vitroの系において、tauもカルシウム濃度依存性に変化を受けた。以上のことから、一過性脳虚血直後には微小菅蛋白付随タンパク質、中でもMAP2が敏感に分解を受け、それらの発現機序には、カルシウム依存性中性蛋白分解酵素(CANP)の関与が示唆された。 3.死後人脳中HA含量をアルツハイマ-型痴呆患者(SDAT)群6例(77.3±10.5才)および対照群8例(65.87±14.30才)で調べた結果、Temp oral poleとGlobus pallidusを除く全ての部位で平均30ー50%増大しており、中でも海馬後部のHA含量は著明な増大を示し(対照群;3.139±0.635nmol/mg、SDAT群7.850±1.430nmol/mg)、加齢ラットのHAパタ-ンと異なっていた。脳組織中HA含量の神経性HAの占める割合は、部位により異なり、SDATにみられるHA含量の増大がどのプ-ルの変化を表わしているのかは、まだ明らかではないが、コリン作動系の機能障害を代償するために神経性HAの機能が亢進しているのかも知れない。
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[Publications] Ramon Cacabelos: "Brain Histamine in Alzheimer'Disease." Meth and Find Exp Clin Pharmacol. 11. 353-360 (1989)
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[Publications] 新川久義: "乳頭体部および前脳基底部破壊ラットの行動内分泌学的検討" 神経化学. 28. 390-391 (1989)
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[Publications] 工藤喬: "蛋白代謝からみた脳血管性痴呆" 老年期痴呆. 3(2). 71-80 (1989)
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[Publications] 神経化学. 28. 480-481 (1989)