Research Abstract |
胃癌切除胆石症の臨床的検討では,肝機能正常例に比べ肝障害例に胆石症が有意に多発した。そこで平成2年度は胆障害犬作成を予定した。胆障害実験に入る前に,20頭以上の実験犬のうち,6カ月以上生存犬11頭の実験結果の整理を行った。すなわち対照群(4頭),BI群(3頭),BII群(4頭)の3群間の1年間に亘る胆汁組成の変化,胆汁感染の有無についての比較検討である。その結果,1)TBAは3群間に差は無いが,分画ではBI群,BII群は対照群に比べ二次胆汁酸DCAの増加と一次胆汁酸CAの減少および時期によってはその逆転が認められ,また遊離型胆汁酸の増加が顕著であった。2)Lithogenicityは3群共低かった。3)11頭中10頭に胆嚢胆汁の持続感染を認めた。4)BI群3頭中1頭,BII群4頭中2頭にビリルビンカルシュウムを含む黒色石が発生したが,対照群には発生しなかった。5)以上の二次胆汁酸および遊離型胆汁酸の増加,胆汁感染の状態,発生胆石の種類などを総合して考えると,胆石の発生には胆汁感資が大きな役割を果たしているものと思われていた。これらの実験の継続,維持,得られたデ-タの整理に平成2年10月までを要した。実険期間中,デ-タより除外した6カ月未満死亡犬に加え,8カ月目に対照群の3頭を皮膚病で失い,新たに対照群の作成を余儀なくされ,肝障害実検開始は平成2年11月2なってしまった。臨床的に胆石症の発生頻度がよ高いBII群と対照群を対象に,四塩化炭素の皮下注射による肝障害犬の作成を目指した。しかし,本剤を皮下に注射する方法では,注射後数回で皮下に血腫や膿瘍を形成,実験継続が困難で中止せざるを得なかった。従って,当初予定した肝障害実験は犬の死亡,動物舎や経済的問題による慢性実験犬飼育頭数の生限,実験方法の失敗などのため成功しなかった。結局,肝障害に関しては臨床デ-タを実験的に証明することができなかったが,実験方法を変更して検討中である。
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