1989 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌肝転移の基礎的臨床的研究-アラキドン酸カスケ-ドからみた転移機構の解明とその臨床応用
Project/Area Number |
63480299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森岡 恭彦 東京大学, 医学部(病), 教授 (10048952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾野 雅哉 東京大学, 医学部(病), 医員
洲之内 広紀 東京大学, 医学部(病), 助手
久保田 芳郎 東京大学, 医学部(病), 医員 (70170040)
沢田 俊夫 東京大学, 医学部(病), 助手 (50143441)
武藤 徹一郎 東京大学, 医学部(病), 助教授 (20110695)
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Keywords | 大腸癌肝転移 / プロスタグランジンE_2(PGE_2) / 局所免疫 / PGE_2局所不活化率 / 転移巣形成 / 好中球 |
Research Abstract |
免疫抑制作用をもつプロスタグランジンE_2(PGE_2)と大腸癌原発巣における免疫能との関係を肝転移の観点から検討した。1)PGE_2の灌流静脈血値/流入動脈血比(以下PGE_2V/A比)は、肝転移を有する症例13.3±2.4の方が肝転移を有しない症例(5.6±0.8)に比較して、有意に高かった。2)免疫組織化学的検討から、PGE_2V/A比が増加するにつれ、IL-2レセプタ-陽性細胞数は減少し、局所免疫能が抑制されていることが示唆された。3)PGE_2は組織で産生され、同時に不活化される。そこでPGE_2の組織不活化率を算出すると、腫瘍組織のPGE_2不活化率43.2±4.0%は、非癌部粘膜の不活化率65.2±3.0%より明らかに低値であった。同時性肝転移例の原発大腸腫瘍組織PGE_2不活化率は、29.9±5.1%と非肝転移例の51.3±4.0%に比較して低値であった。4)PGE_2V/A比はPGE_2腫瘍組織不活化率と負の相関を示したが、PGE_2組織産生量との間には相関がみられなかった。以上のことより、“PGE_2は、原発巣において、抗腫瘍効果をもつ細胞数を減少させることなどにより局所免疫能を低下させ、このため肝転移のおこりやすい局所の環境がつくられる。その局所免疫能低下はPGE_2の不活化の度合が低下することがその主因と考えられる。"との結論をえた。 次に動物実験モデルにおいて、腫瘍細胞の標的臓器である肝において転移巣形成の初期段階には、免疫担当細胞として好中球が数多く存在することが明らかとなった。このことから、転移巣形成初期における好中球の役割が示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 森岡恭彦: "大腸癌の外科的治療" 診断と治療. 76. 1661-1665 (1988)
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[Publications] 武藤徹一郎: "大腸癌の縮小手術-特に直腸癌の局所切除を中心に" KARKINOS. 2. 555-561 (1989)
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[Publications] 沢田俊夫: "大腸癌の拡大手術と縮小手術" 手術. 43. 379-386 (1989)
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[Publications] 久保田芳郎: "大腸癌転移形成における腫瘍増殖能と局所免疫反応との比較について" BIOTHERAPY. 3. 1159-1162 (1989)
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[Publications] 洲之内広紀: "炎症性腸疾患とプロスタグランジン" 外科治療. 61. 1111-1116 (1989)
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[Publications] 洲之内広紀: "大腸癌肝転移からみた局所免疫能とプロスタグランジンE_2(PGE_2)との関係" 日本消化器外科学会雑誌. 6. (1990)
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[Publications] 洲之内広紀: "腹部画像診断の要点-最適診断のための役割と注意点" メジカルビュ-社, 194-200 (1989)