1988 Fiscal Year Annual Research Report
腹腔内温熱化学療法の消化管吻合部創傷治癒への影響に関する実験的研究
Project/Area Number |
63480305
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
前田 廸郎 鳥取大学, 医学部, 講師 (70032208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜副 隆一 鳥取大学, 医学部, 助手 (40156394)
清水 法男 鳥取大学, 医学部, 講師 (40108808)
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Keywords | 腹腔内温熱化学療法 / 持続温熱腹膜灌流 / 消化管吻合 / 創傷治癒 |
Research Abstract |
現在までの成果:胃癌の再発様式の中で最も高頻度なものは腹膜再発である。われわれはこれへの対策として42℃の生食水(MMC添加)による持続温熱腹膜灌流(CHPP)をrandamized control studyにて行ない、その再発抑制効果を報告してきた。この際に、更に高温灌流が可能であれば抗腫瘍性は高まると考えられるが、消化管吻合部創傷治癒への影響が危倶された。そこで今回、消化管吻合に及ぼす温熱の影響について検討した。まず、腸管加温(30分)の温度限界を調べると、45℃加温ラットはすべて死亡し、44℃加温ラットの死亡率は低率であった。そこで、小腸の端々吻合後に同部に加温(44℃)を行ない、吻合部張力、組織所見を経時的に観察した。その結果、術後3日目に吻合部張力の低下がみられたが、7日目には元に回復し、14日目には術前値を上廻った。組織学的には加温群に一過性の小腸絨毛の脱落がみられたが、粘膜下層以下の所見には非加温後と大差はみられなかった。7日目以降では、加温群において粘膜下層を主とするfibrosisと筋層の肥厚が強くみられた。加温群では非加温群に比べ、術後の体重減少とその回復の遅延がみられ、加温に起因したfibrosisによる腸管狭窄や腸管運動への影響が示唆された。なお、腸管加温の際にMMCを併用した場合にも、それによる大きな影響はみられず、加温単独群にほぼ類似した結果であった。 現段階での考察と今後の予定:腹腔内加温には当然温度限界があるが、ラットにおいては44℃と考えられた。この際の消化管吻合の創傷治癒への加温の影響は軽微なものと考えられた。臨床的にも、現行の42℃から更に高温灌流の可能性が示唆され、それに伴う抗腫瘍性増強を期待しうると考えられる。今後はmicroangiogmphyによる吻合部血流への影響や、吻合部組織のcollagen量などhistochemicalな分析を行なう予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 前田廸郎: 癌と化学療法. 15. 1423-1428 (1988)
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[Publications] Shigemasa Koga: Cancer. 61. 232-237 (1988)
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[Publications] 浜副隆一: 手術. 42. 1067-1072 (1988)
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[Publications] 貝原信明: 癌と化学療法. 15. 1269-1272 (1988)
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[Publications] Murakami Atsunobu: Oncology. 45. 236-241 (1988)
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[Publications] 清水哲: 最新医学.
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[Publications] 前田廸郎: "新現代外科学大系、10B、腫瘍の外科II" 中山書店, 133-152 (1988)