1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480348
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
日地 康武 鳥取大学, 医学部, 教授 (90094101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 修 鳥取大学, 医学部, 助手 (20108799)
井元 敏明 鳥取大学, 医学部, 助教授 (10109639)
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Keywords | 局所麻酔 / プロカイン / 麻酔増強効果 / モノカルボン酸イオン / サリチル酸ナトリウム / 水素クリアランス法 / 組織血流量 / 坐骨神経 |
Research Abstract |
ザリガニ巨大神経に対する局所麻酔において発見されたモノカルボン酸イオンによる麻酔増強効果は、ラット坐骨神経とヒト痛覚においても確認された。 摘出したラット坐骨神経束に、0.1%プロカインを30分間作用させると、活動電位の大きさは約1/4になり,洗浄によって徐々に回復する。各種モノカルボン酸ナトリウム0.7%を添加すると、モノカルボン酸の炭素鎖長に応じて、著しい麻酔発現時間の短縮と麻酔持続の延長が観測された。 一方、血流が存在する生体内での麻酔増強効果を調べてみると、摘出神経束で得られたものと一部異なる結果を得た。バルビタ-ル麻酔下のラット坐骨神経を、大腿部で切開露出し、プロカインによる麻酔経過を観測した。サリチル酸ナトリウム存在下では、摘出神経束の場合と同様に、強い麻酔増強が認められたが、プロピオン酸等の直鎖型で炭素鎖の長いイオンの存在下では、麻酔発現時間は短縮されたものの、麻酔からの回復が逆に早くなった。 そこで、これらのイオンの存在によって神経束内の局所血流量が受ける影響を、水素クリアランス法を用いて調べた。この結果、プロピオン酸イオン存在下で約30%の組織血流量の増加、一方、サリチル酸イオンでは17%の減少(共に有意)が起っていることが判明した。即ち、生体内での局所麻酔も、サリチル酸添加によって著しい麻酔増強が起るが、これは局所麻酔薬の臨界濃度を下げる等の神経膜に対する直接的な効果と、局所血流量を抑えて麻酔薬濃度の低下を遅らせる作用とによって、一層効果的に麻酔増強が起ると考えられる. ヒト上腕部皮膚でのプロカインによる痛覚鈍麻を調べた実験でも、サリチル酸イオン存在下では、約4倍の麻痺持続が観測された。
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