1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480385
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神崎 仁 慶應義塾大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 教授 (00051441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 茂雄 慶應義塾大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (10177131)
國弘 幸伸 慶應義塾大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (10170010)
小川 郁 慶應義塾大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (00169179)
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Keywords | 聴神経腫瘍 / 聴覚障害 / 虚血性内耳障害 / 蝸牛血流 / 聴力保存手術 |
Research Abstract |
聴神経腫瘍による聴覚障害の病態を明らかにし、聴神経腫瘍の聴力保存手術成積を向上させる目的で、本年度は以下の実験を行った。 1.蝸牛循環障害と聴覚障害との関係を検討するためにモルモットを用いた蝸牛循環障害の実験モデルを(1)人工呼吸器停止によるanoxia負荷、(2)100%窒素ガス吸入によるanoxia負荷、(3)前下小脳動脈(AICA)遮断、により作製し、負荷中、負荷後の蝸牛血流の変化と蝸電図の変化との関係について検討した。その結果、(1)(2)の負荷では5分間の負荷で蝸牛神経核より中枢の聴覚路に不可逆的変化が生じる可能性が考えられたが、蝸牛には明らかな不可逆的変化は認められなかった。(3)ではAICA遮断の程度とAPの変化にはほぼ平行関係が認められたが、血流遮断率40%でもAPに変化のない例や、遮断率68%でもAPが消失する例が認められ、個体差は極めて大きいと考えられた。なお、現在レ-ザ-ドプラ-血流計を2Bとし蝸牛内各部位での循環障害の違いについて検討中である。 2.ステロイド投与・蝸牛への局所的低温負荷が窒素負荷時の蝸牛血流・蝸電図に与える影響について検討した。ステロイドの蝸牛血流に対する影響は明らかではなかったが、ステロイド投与により窒素負荷後のAP落時の回復が早くなる傾向が認められ、ステロイドにはanoxia負荷による蝸牛毛細胞の障害を軽減させる作用があると考えられた。また局所的低温負荷では対照群に比べて冷却群でAPが早期に消失し、窒素負荷解除後のAPの出現も遅れる傾向が認められたが、95%回復時間は対照群に比べて逆に短縮する傾向が認められた。この結果より蝸牛の局所的冷却により蝸牛の代謝抑制が生じ、蝸牛循環障害による聴覚障害が軽減される可能性が考えられた。以上の結果より、ステロイド投与、蝸牛の局所的低温負荷はいづれも聴神経腫瘍の聴力保存手術の補助的手段として臨床応用しうると考えられた。
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Research Products
(1 results)