1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480391
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
岸 章治 群馬大学, 医学部, 助手 (30125843)
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Keywords | 硝子体 / 網膜硝子体界面病変 / 黄斑前硝子体液化のう / 増殖性糖尿病性網膜症 / bursa premacularis |
Research Abstract |
フォトスリットカメラ(コーワSC-6)を群馬大学眼科外来に設置し、剖検人眼硝子体の解剖学的検索と網膜硝子体界面病変の臨床研究を行なった。解剖学的研究では、硝子体のうちゲル成分のみをフルオレスセインで染色し、水浸状態でフォトスリットで観察するという方法を用いた。これにより、透明でゲルと水からなる硝子体を、生理的な計上を保ったままその構造を観察することが可能になった。この結果、人眼の硝子体には黄斑前硝子体液化嚢という特殊な構造があることが実証できた。黄斑前硝子体液化嚢は、基本的には網膜の血管アーケイドに囲まれた後極部を基底面とする液化腔である。その眼底側は薄い硝子体皮質によって境されており、前方は有形硝子体によって形づくられている。この硝子体の解剖学的特性は、従来、その成因が不明であった黄斑前網膜線維症、黄斑円孔や増殖性糖尿病性網膜症の網膜硝子体界面病変の形成に大きくかかわっていることが予想される。この成果は日本眼科学会雑誌にて発表された。我々は、剖検眼で得られた知見をもとにこれらの疾患群の硝子体病変の臨床的研究を行なった。 増殖性糖尿病性網膜症では、網膜硝子体癒着が網膜血管アーケイドに沿って輪状に形成される傾向があり、これが類型的な病像形成の原因となっている。しかし、なぜこの様な輪状の増殖性病変をつくるかは不明であった。網膜前出血から索引性網膜剥離に至る糖尿病性網膜症384眼の硝子体を検索し、黄斑前硝子体液化嚢が網膜前出血の分布のみならず、定型的な増殖性病変の形成に大きく関与していることを証明した。この成果は昭和63年の臨床眼科学会において発表され、平成元年5月の臨床眼科雑誌に掲載予定である。
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