1990 Fiscal Year Annual Research Report
口腔連鎖球菌の嫌気的糖代謝系酵素の量的調節機構の研究
Project/Area Number |
63480409
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
阿部 一彦 東北大学, 歯学部, 助教授 (40151089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 喜道 東北大学, 歯学部, 助手 (60005030)
山田 正 東北大学, 歯学部, 教授 (50005021)
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Keywords | ピルビン酸ギ酸リア-ゼ / 酸素感受性酵素 / Streptococcus mutans / Streptococcus sanguis / NADPH / 酸産生 / 酸素傷害 / 嫌気的糖代謝 |
Research Abstract |
連鎖球菌の嫌気糖代謝で中心的な役割を担うピルビン酸ギ酸リア-ゼ(PFL)は酸素感受性な活性型(A型)と酸素に耐性な可逆的不活性型(R型)との間で相互に変換する。R型PFLは酸素と接触しても酸素障害を回避して、その後に嫌気条件下でA型PFL活性化してギ酸、酢酸などの産生性を取り戻す。ゲルクロマトグラムにより、S.mutansのR型PFLをA型PFLへと変換させる活性化酵素が存在し、その分子量が約45,000であることが判明した。このPFL活性化酵素は不安定で、硫安による塩析処理・透析処理によってほぼ完全に活性を失い、PFL活性化酵素の精製に関する検討は大きく遅れをとった。しかし、活性を失ったPFL活性化酵素はFADやFMNとインキュベ-トすることによって活性化作用を回復した。R型PFLと活性化酵素を分離して検討したところ、S.sanguisのPFL活性化酵素はS.mutansのR型PFLをも活性化した。しかし、逆にS.mutansのPFL活性化酵素はS.sanguisのR型PFLからA型PFLへの活性化を触媒せず、それぞれのPFL活性化酵素は異なるものと考えられる。また、R型PFLの活性化反応にはNADPHやNADHなどの還元型ピリミジンヌクレオチドがこれまで用いられていた還元型メチルビオロゲン(MV)に替わることが判明した。S.mutansでは低濃度のNADPHでMVに比べてはるかに効率よくR型PFLを活性化するのに対して、S.sanguisのPFLの活性化にははるかに高濃度のNADPHが要求され、また、活性化する速度も遅いことがわかった。このような違いが、S.sanguis生菌菌体内ではPFLを酸素耐性なR型へと変換しやすく、S.mutansでは酸素感受性なA型PFLを保つという性質をもたらすと考えられる。その結果、S.sanguisの糖代謝は酸素の影響をあまり受けず、S.mutansではPFLは酸素に感受性なA型であるため、その糖代謝が低濃度の酸素の存在によっても大きく影響されると考えられた。活性化酵素の精製にはさらに今後とも検討を続けたいと考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] K.ABBE: "In vitro interconversion of the pyruvate formateーlyase of Streptococcus mutans between the oxygenーsensitive active form and the oxygenーinsensitive inactive form."
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[Publications] K.ABBE: "NADH oxidase and Cu^<2+>ーmediated oxidative inactivation of Streptococcus salivarius fructosyltransferase." Life Science Advances.
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[Publications] Y.IWAMI: "Increased lactate production by Streptococcus mutans NCIB 11723 at low pH level under anaerobic conditions." 発表予定.
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[Publications] 阿部 一彦: "口腔連鎖球菌のピルビン酸ギ酸リア-ゼとその活性化酵素" 歯基礎誌. 32(補冊). 97 (1990)