1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480442
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Research Institution | Nagoya University, School of Medicine |
Principal Investigator |
上田 実 名古屋大学, 医学部, 講師 (00151803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 真一 名古屋大学, 医学部, 医員
江幡 晃治 名古屋大学, 医学部, 助手 (10203647)
角 保徳 名古屋大学, 医学部, 助手 (30187801)
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Keywords | 口腔再建 / 人工粘膜 / 粘膜移植 / 細胞培養 |
Research Abstract |
前年度の研究によって、ヒト培養細胞を用いてほぼ正常な粘膜構造を持った培養人工粘膜を作成することが可能になった。また移植方法についても感染防御法、乾燥防止法などについても対策ができるようになった。 次に残された問題は培養人工粘膜の移植時期であるが、最も適当な移植時期は再構成粘膜が組織としての安定性を獲得した時期と考えられた。組織としての安定性は上皮と間葉組織の間で相互作用が成立した時期であると考えられており、その指標としては両者の間に形成される基底膜が適当と考えられた。申請者らは培養再構成粘膜の培養期間別に電子顕微鏡による観察を行った結果、上皮培養後4週で基底細胞直下に不連続な基底膜構造を確認した。従って培養人工粘膜の移植時期としては上皮培養後4週頃が適当と考えられた。 培養人工粘膜の安全性の確認法としては使用する細胞のエア-ドライ法による染色体検査を行った。その結果、数ヶ月以内のヒト培養細胞では染色体の異常は認められなかった。これによって培養人工粘膜はヒト口腔内においても安全、確実に生着させうることが明らかになった。 以上の研究成果をもとに名古屋大学医学部附属病院において3例の培養人工粘膜の移植手術を行った。患者の年齢は57歳、28歳、61歳であった。原疾患は口蓋腫瘍、口腔前庭狭窄症、歯肉腫瘍であった。移植後の経過は良好で全例生着した。今後はさらに症例を重ね一層の移植技術の改善、長期的な予後観察を行い、本法の臨床応用法を確立したい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 上田実: "生細胞を用いた口腔粘膜の再構成と移植に関する研究" 日本歯科医学会雑誌. 8. 56-61 (1989)
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[Publications] 江幡晃治: "培養再構成口腔粘膜の移植に関する研究" 日本口腔科学会雑誌. 38. 915-928 (1989)
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[Publications] 上田実: "口腔粘膜の再構成に関する研究" 日本口腔科学会雑誌. 38. 1123-1144 (1989)
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[Publications] 佐々木真一: "口腔粘膜固有層モデルを用いた創収縮機序の解析-コラ-ゲンゲル収縮に及ぼすパパベリンの影響-" 日本口腔科学会雑誌. 39. (1990)
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[Publications] 上田実: "培養細胞による粘膜組織の再構成に関する研究" 組織培養. 16. 58-61 (1990)
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[Publications] 中井康寿: "培養再構成口腔粘膜の微細構造に関する研究-上皮細胞の分化と基底膜形成機序について-" 日本口腔科学会雑誌. 39. (1990)
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[Publications] 上田実: "細胞社会とその形成" 東京大学出版会, 290 (1989)