1988 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子移入再構成系を用いた情報受容伝達機構の分子薬理学的研究
Project/Area Number |
63480473
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野村 靖幸 北海道大学, 薬学部, 教授 (00034041)
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Keywords | 遺伝子移入 / 情報受容伝達機構 / 卵母細胞 / セロトニン応答電流 / Ras形質転換 / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
外来性遺伝子移入細胞である能mRNA移入卵母細胞ならびにv-ki-ras形質転換線維芽細胞を用いて、細胞情報伝達機構を検討し次ぎの結果を得た。 1.ラット脳mRNAを移入すると卵母細胞は、電位固定下でセロトニン(5-HT)に応答して内向き電流を発現した。以下その機構を検討した。 (1)5-HT応答電流は、ミアンセリン(5-HT_<1C>受容体遮断薬)により抑制されたが、他の5-HT_<1A>、5-HT_<1B>、5-HT_2、5-HT_3受容体遮断薬によってはほとんど影響されなかった。そこで5-HT応答電流は5-HT_<1C>受容体を介すると推定された。(2)5-HTに応答して誘起される電流に同期してCl^-流出の生じることがわかった。したがって5-HT応答電流はClチャネルを透過して流出するCl^-によると示唆された。(3)5-HTに対して生ずる内向き電流もCl^-流出も二相性を示し、それぞれはミアンセリンに対し異なる感受性(速い応答は高感受性、遅い応答は低感受性、両者はミアンセリンの50%抑制濃度にして約100倍の差)を示したので、両応答の機構は異なると推定した。(4)5-HT応答はネオマイシン処理で抑制され、イノシトール1、4、5-三リン酸やイノシトール1、3、4、5-四リン酸の細胞内注射で5-HT誘起電流に類似の電流を生じたことより、5-HT応答電流にイノシトールリン脂質代謝が関与することが示唆された。今後、5-HT応答機構の詳細、とくに関与するGTP結合蛋白質の性質、イノシトールリン酸のCa^<2+>を介するClチャネル開口機構を明らかにすべく検討したい。 2.v-ki-rasで形質転換したNIH/3T3線維芽細胞において、GTP結合蛋白質を介するcANP産生活性が対照群より増加することを見い出した。その機構を解明するため、コレラ毒、百日咳毒を用いてそれぞれGs、GiをADPリボシル化しその程度を正常細胞と比較したところ、形質転換細胞ではGsは変化なくGiが約1/3に低下することがわかった。この結果より形質転換によりGi量が減少しcAMP産生抑制が低下すると推定した。
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[Publications] Konishi-Imamura,Lisa: Biochemical and Biophysical Research Communications. 153. 1214-1222 (1988)
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[Publications] Tohda,Michihisa: Eurpean Journal of Pharmacology. (1989)
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[Publications] Tohda,Michihisa: Molecular Brain Research.
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[Publications] 野村靖幸: "「α受容体の脳における情報伝達」中の1章「脳の細胞内情報伝達:受容体、G蛋白、チャネルとCキナーゼ」" 医薬ジャーナル社, 11-48 (1989)
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[Publications] Nomura,Yasuyuki: "The transmembrane signalling mechanism of serotonin-evoked inward current responses in Xenopus oocytes injected with rat brain mRNA.In Mechanism of Transmembrane Signalling" Elsevier Science Publisher,Amsterdam,