1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480490
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 圭三 東京大学, 薬学部, 教授 (30072937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 真郷 東京大学, 薬学部, 助手 (10185069)
工藤 一郎 東京大学, 薬学部, 助教授 (30134612)
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Keywords | ウサギ血小板 / ホスホリパ-ゼA_2 / アラキドン酸代謝 / カルシウムイオン / ヒト血小板 |
Research Abstract |
血小板を刺激すると、分子量14KDaのホスホリパ-ゼA2が細胞外に放出されることを、ラットやウサギで従来明らかにしてきた。本年度は、この酸素とは異なるホスホリパ-ゼA2を、ウサギ血小板の細胞質を酵素源に、精製した。精製には、イオン交換、疎水カラム、ゲルろかHPLCカラムを用いた。最終精製標品は、SDS電気泳動上で分子量約88KDaの単一バンドを示した。基質として、2位にアラキドン酸を持つリン脂質を、リノ-ル酸をもつものと比較して非常によく加水分解した。また、活性発現にはカルシウムイオンが必須であるが、血小板の活性化にともなって上昇するとされているマイクロモルオ-ダ-のカルシウムイオンを添加することによって、ほぼ100%の酵素活性がみられた。これらの性状は、従来精製し性状を明らかにされてきた高等動物細胞由来のホスホリパ-ゼA2と異なっており、新しいタイプの酵素が精製できたものと考えている。この細胞質由来の酵素と同様の性状のものはウサギ血小板膜画分にも、量は少ないながら検出された。さらに、酵素源である血小板細胞質を調製する際に、カルシウムイオンを微量存在させておくと、膜画分に存在するホスホリパ-ゼ活性の割合が増した。一方、ヒト血小板細胞質を材料にアラキドン酸含有リン脂質を基質にして、ホスホリパ-ゼA2を精製した。その結果、ウサギの場合とほぼ同じ性質の酵素が存在することがわかった。以上の結果は、今回精製した分子量88KDaのホスホリパ-ゼA2は、血小板の活性化に伴って増加する細胞内のカルシウムイオンによって、直接に活性調節される酵素であると考えられた。活性化によりこのホスホリパ-ゼA2は、可溶性の性質から、膜結合性の性質に変化するものと思われる。
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[Publications] 水島洋: "ウサギ血小板分泌性ホスホリパ-ゼA_2の精製とその性状" J.Biochemistry. 105. 520-525 (1989)
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[Publications] 原俊太郎: "ヒト慢性関節リウマチ患者関節腔液中のホスホリパ-ゼA_2の精製と性状" J.Biochemistry. 105. 395-399 (1989)
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[Publications] 駒田雅之: "ラット血小板ホスホリパ-ゼA_2のcDNAの構造" J.Biochemistry. 106. 545-547 (1989)
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[Publications] 村上誠: "ラット血小板ホスホリパ-ゼA_2の生体内動態" Biochim.Biophys.Acta. 1005. 270-276 (1989)
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[Publications] 諏訪頼正: "炎症部位由来ホスホリパ-ゼA_2を特異的に阻害するタンパク質" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. (1990)
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[Publications] 金大敬: "ウサギ血小板細胞質のホスホリパ-ゼA_2の精製と性状解析" J.Biochemistry.