1989 Fiscal Year Annual Research Report
アクチン・ミオシン間の『滑り』運動に対応するコンフォメ-ション変化の解析
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63480508
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Research Institution | FACULTY OF MEDICINE, THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
片山 栄作 東京大学, 医学部(医), 文部教官助手 (50111505)
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Keywords | 筋収縮 / ミオシン / アクチン / 滑り運動 / コンフォメ-ション / 平滑筋 / カルデスモン / Ca^<2+>調節 |
Research Abstract |
急速凍結電子顕微鏡法を用いた昨年度までの研究により、F-アクチンに結合したミオシン頭部サブフラグメント-1(S1)の形態が硬直複合体においては細長くFAと約45度の角度を成しているのに対しATP存在下では短く丸く変わっていることを見いだした。種々の状況証拠から『滑り』運動を行っているS1はこの変化した形状を取っていると考えられる。そこで今年度は、S1が丸くなるとはどのような分子内構造変化に対応しているのか、また昨年度確認したような、『滑り』運動が実際に起きる溶液条件においてもミオシン頭部の同様な構造変化が実現しているのかどうかを調べることに重点目標をおいた。まず、2個の頭部と短い尾部をもち、また『滑り』運動を起こすのに適した比較的低い塩濃度においてもフィラメントを作らない重メロミオシン(HMM)を用い、その形態がヌクレオタイド結合により変わり得るかどうかを調べた。マイカ表面に吸着したHMM分子はヌクレオタイドを加えない場合には典型的な洋梨状の形態を示し、S1-S2結合部から頭部先端にかけて太さはスム-ズに移行していた。これに対し、ADPを加えたときにはS1-S2結合部付近が細くなっているように見えた。HMMにADPと無機バナジン酸(Vi)を結合させてHMM-ADP・Piの長寿命アナログを作らせると明らかな構造変化が認められた。HMMの各頭部は大きく屈曲ししかもその曲がりの方向はすべての頭部で同じであった。ATPを加えた場合にも形態は類似していたがADP・Viのときほど均一ではなかった。これらの結果からミオシン頭部が丸くなる理由として、分子内で屈曲が起きている可能性が強く示唆される。筋肉収縮に対応する試験官内現象である超沈澱においても同様のミオシン頭部の形態が観察され、この形態変化は実際の筋肉収縮中にも実現されているものと考えられる。現在、急速凍結装置を高輝度閃光装置と組み合わせてケ-ジドATPを用いる高時間分解能の実験系を製作中である。
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[Publications] E.Katayama: "The Effect of Various Nucleotides on the Structure of Actin-Attached Myosin Subfragment-1 Studied by Quick-Freeze Deep-Etch Electron Microscopy" J.Biochemistry. 106. 751-770 (1989)
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[Publications] E.Katayama,K.Y.Horiuchi & S.Chacko: "Characteristics of the Myosin and Tropomyosin Binding Regions of the Smooth Muscle Caldesmon" Biochemical and Biophysical Rrsearch Communications. 160. 1316-1322 (1989)
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[Publications] E.Katayama: "Assignment of the Positions of Chymotryptic Fragments and Cysteinyl Groups in the Primary Structure of Caldesmon in Relation to a Conformational Change" J.Biochemistry. 106. 988-993 (1989)
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[Publications] E.Katayama,K.Y.Horiuchi & S.Chacko: "Binding of Proteolytic Fragments of Caldesmon to Myosin and Tropomyosin" Biophysical Journal. 55. 232a (1989)
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[Publications] 片山栄作: "クロスブリッジの動き(光学顕微鏡および電子顕微鏡による研究を中心にして)" 実験医学. 17. 1882-1889 (1989)
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[Publications] 片山栄作: "マイカ細片法" 実験医学. 18. (1990)