1989 Fiscal Year Annual Research Report
コレステロ-ル胆石形成機序の解明(胆汁中蛋白および非ミセル粒子の意義)
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63480520
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梶山 梧朗 広島大学, 医学部, 教授 (40034087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田妻 進 広島大学, 医学部附属病院, 助手 (80201614)
堀内 至 広島大学, 医学部, 講師 (60157055)
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Keywords | コレステロ-ル胆石 / コレステロ-ル結晶析出 / nucleation time / アラキドン酸 / ムチン / プロスタグランジン / モルモット / 胆汁 |
Research Abstract |
ヒト胆嚢胆汁を無菌的に採取し、胆汁中ムチンを巨大分子画分に焦点を紋って、ゲルクロマトグラフィ-法にて分画採取してPAS法にて定量した。さらにコレステロ-ル結晶析出時間(NT)を既存の方法で算出し、胆汁中脂質組成をレシチン中脂肪酸分画も含めてキャピラリ-ガスクロマトグラフィ-法にて分析した。その結果、NTの短縮している胆汁ではムチン含量が高く、逆にNTの延長している胆汁では低かった。一方、胆汁中コレステロ-ル飽和度は前者において高く、後者に低かった。さらに興味深いことには、胆汁中レシチン中アラキドン酸濃度が、ムチン高値胆汁において高く、逆にムチン低値胆汁では低かった。従って、プロスタグランジンの前駆物質であるアラキドン酸が、肝からのコレステロ-ル分泌増加に伴い、レシチン中へ高濃度に分布し、胆嚢内でホスホリパ-ゼによって遊離して胆嚢壁から吸収され、さらにプロスタグランジンに合成されてムチン産生および分泌が高まってコレステロ-ル結晶析出性が亢進することが推察された。コレステロ-ル結晶析出の場となる非ミセル分画中脂質粒子が、NT短縮例ではその径が大きく、巨大化が迅速に進んで短時間でコレステロ-ルマイクロクリスタルを析出させたが、NT延長例では安定であった。一方、上記の現象におけるプロスタグランジンの役割を動物実験にて検討した結果、プロスタグランジンを長期的に投与されたモルモットにおいて胆石形成を高率に認め、その原因としてアデニルサイクレ-ス賦活を介するムチン産生と分泌の亢進が確認された。以上の成績から、コレステロ-ル胆石形成過程における、胆汁中コレステロ-ル過剰、レシチン中アラキドン酸濃度比の上昇、プロスタグランジンを介する胆嚢ムチン分泌の増加およびそれに伴うコレステロ-ル結晶析出性亢進の一連の概要が明らかになった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 田妻進: "胆汁中コレステロ-ル溶存性を規定する因子に関する研究ー胆汁蛋白、特にアポ蛋白Aー1の意義に関連してー" 日本消化器病学会雑誌. 86. 1666-1672 (1989)
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[Publications] 田妻進: "胆汁中disc様粒子とそのrouleau formationの証明ーコレステロ-ル結晶析出過程における役割ー" 日本消化器病学会雑誌. 86. 144 (1989)
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[Publications] Susumu Tazuma: "Effect of ursodeoxycholic acid administration on nucleation time in human gallbladder bile" Gastroenterology. 97. 173-178 (1989)
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[Publications] Kazunobu Koide: "Effect of CS-514,a competitive inhibitor of hydroxymethylglutaryl coenzyme A reductase,on cholesterol gallstone formation in hamster" Biochimica et Biophysica Acta. 1005. 65-71 (1989)
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[Publications] 田妻進: "特集:体外衝撃波胆石破砕療法の現状ー胆石溶解療法無効例に対する体外衝撃波療法ー" 胆と膵. 11. (1990)
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[Publications] 田妻進: "Methyl tert-butyl ether(MTBE)によるコレステロ-ル胆石直接溶解療法の基礎的検討および臨床応用" 胆道. 4. (1990)
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[Publications] 梶山梧朗: "COMMON DISEASE SERIES 13“胆石症"ー食事と胆石" 南江堂, 5 (1990)
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[Publications] 梶山梧朗: "血清脂質異常の臨床" 永井書店, (1989)