1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63490022
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
新井 英夫 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 室長 (00000456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 盛也 京都大学, 農学部, 助教授 (10026578)
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Keywords | 微風速風洞 / 環境制御 / 絶対好稠性糸状菌 / 薬剤感受性 |
Research Abstract |
本年度から、微風速風洞を用いて微風が糸状菌の発芽に及ぼす影響の実験を始めた。すなわち、微風速風洞内を21〜26℃、72〜79%RHに調整し、風速が1.05〜1.19m/s及び0.27〜0.28m/sのときの共試菌株の発芽に有無を検討した。その結果、(1)風速が1.10m/sのとき、78〜79%RHの風洞中の方が対照とした無風の84%RHのAwペトリ皿内より良好な生育を示し、(2)風洞内の設定温湿度条件によって供試菌株を選択する必要があり、(3)供試菌株は1菌株で実施すべきこと、(4)風速が0.27〜0.28m/sのとき、25〜26℃で71〜77%RHでAspergillus nigerとCladosporium herbarumの発芽にばらつきが認められる等の知見を得た。これは、今後再現性のある微風速風洞実験を行なうときの検討課題の存在を示した。すなわち、風洞内の湿度が一定となり、湿度差のある微風が流れていない可能性や風路中に湿度差が生じている可能性もあった。従って、本実験は恒温室で実施する必要性及び風洞には湿度差のある微風を供給する工夫が必要であるとの結論を得た。 瑞巖寺の復元襖絵に発生した糸状菌を採集して、微生物分類学的研究を行なった。分離した17菌株には、絶対好稠性糸状菌が8菌株含まれ、それらは、Aspergillus ruber、Asp.repens、Asp.mangini、Asp.penicilloidesの近縁種であることを明らかにした。これらの菌株は、襖絵に褐色斑点を形成するので注意しなければならない。 文化財の被害要因となる糸状菌は、薬剤による防除法も検討する必要があるので、それら糸状菌の薬剤感受性も検討した。すなわち、文化財から分離したAsp.penicilloides等8株、JISのカビ抵抗性試験法の標準菌株3株と植物病原菌1株を供試して、分子内にハロゲン原子を含まぬ薬剤2種(モカ-ル、プレサイドS)、イプロジオンと対照薬剤を比較検討した。その結果、モカ-ルが低濃度で抗菌活性を示した。
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