1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510010
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
竹尾 治一郎 関西大学, 文学部, 教授 (00067448)
|
Keywords | 志向性 / 経験論 / 知覚 / センス・デ-タ / 現象学 / 対象論 / 論理実証主義 |
Research Abstract |
1.「経験」の意味について。(1)ブレンタ-ノの意味での物的現象とは感覚表象の内容をさし、通常の物的対象ではない。感覚的に表象されるのは現象的、志向的に存在する感覚性質だけであり、それが「物的対象」とよばれる。この意味で彼のいう物的対象とは後に「センス・デ-タ」とよばれたものとほぼ同じである。従ってこの観点からブレンタ-ノのいう経験の内容的意味が明らかになろう。(2)古典的英国経験論における志向性の扱いについては、ヒュ-ムとリ-ドの考えを対比することが有益である。例えば、リ-ドはヒュ-ムに反対して、現実の対象と志向的にのみ存在する知覚対象を区別するが、これは後のフッサ-ルによる感覚と知覚の区別にも関連させられる。 2.心的作用(経験)の対象と内容の区別が重要な関りをもつ問題の1つは、非存在対象の志向(指示)の説明である。この区別はブレンタ-ノでははっきりせず、マイノンクは対象概念の拡張によって答えようとし、フッサ-ルは内容を対象から区別することによって答えようとする。フッサ-ルの方法はフレ-ゲにおける言語表現の指示対象(外延)と意義(内包)の区別にあたり、上の問題の解き方においても密接な対応がみられる。 3.科学との関りについては、ブレンタ-ノに発し対象論および現象学へ進んだ哲学の伝統では、科学理論の内部構造の論理的分析を軽視するという意味において、科学との関係が外面的になり、むしろ一歩退いて言語的意味、社会、歴史、人間といった観点から科学をながめるといった傾向が表面化する。前者はカルナップたち論理実証主義者に、後者はク-ンなどに代表される歴史主義の科学哲学である。(またこれらの傾向はどちらもウイ-ン学団に存在した。例えば、そこでは後者はノイラ-トに代表される。)
|