1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510019
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Research Institution | Sapporo Otani Junior College |
Principal Investigator |
柴田 泰 札幌大谷短期大学, 教授 (10070111)
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Keywords | 唯心浄土思想 / 永明延寿 / 『樂邦文類』 |
Research Abstract |
1.従来の見解と問題の所在 "浄土は心のうちにある"あるいは"浄土は心の所現である"と説く唯心浄土思想は、中国浄土教の主要な思想であるが、従来、部分的にしか研究されていない。本研究はその総合的成果を目的とする。 2.経論に認められる唯心浄土思想 阿弥陀仏・極樂に言及する漢訳経論290部は、すべて西方有相浄土で、唯心浄土思想の典拠になりえない。後に唯心浄土思想の典拠とされた経論は、唯心の諸仏・諸仏浄土を説く経論である。 3.唯心浄土思想成立以前の主な思想 (1)一般的浄土観では、弥陀浄土は低く〔応化土〕考えられた。 (2)唯心浄土思想につながる主な思想は天台・華厳・禅系にあった。 (3)唯心浄土思想の最大の典拠は『観経』「是心是仏」である。 4.唯心浄土思想の成立ーー永明延寿の唯心浄土思想ーー 最初の提唱者永明延寿の唯心浄土思想は天台・華厳・禅系の延長線上にあり、唯心の諸仏浄土である。弥陀浄土は「中下の機」と低く考えていた。これは従来の成果を訂正するものである。 5.唯心浄土思想の確立ーー『樂邦文類』の諸資料ーー 『樂邦文類』には、「唯心浄土説」道深・「唯心浄土文」守訥などの関係資料45点が収録され、唯心浄土思想の諸相が明らかになる。 6.宋代以降の唯心浄土思想 大正蔵経・続蔵経所収の関係資料は、宋代6部・元代4部・明代18部・清代35部あり、その変遷が辿れる。 以上の総合的成果は『北海道印度哲学仏教学会』研究例会(3月11日)に発表した。また、詳論は『札幌大谷短期大学紀要』第22号に掲載予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 柴田泰: 印度哲学仏教学(北海道印度哲学仏教学会). 第3号. 229-243 (1988)
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[Publications] 柴田泰: 印度学仏教学研究(日本印度学仏教学会). 第37巻第1号. 102-108 (1988)
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[Publications] 柴田泰: 藤田宏達博士還正記念論集 インド哲学と仏教. (1989)
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[Publications] 柴田泰: 札幌大谷短期大学紀要. 第22号. (1989)