1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510027
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
市倉 宏祐 専修大学, 文学部, 教授 (20083678)
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Keywords | 無限 / 無際限 / 数学的帰納法 / 三つの秩序 / ジャンセニズム |
Research Abstract |
前年度の研究においては、パスカルの『巾数の和』における無限処理の操作がいかなるものであるかを明らかにしたが、今年度の研究はこの無限処理の操作がパスカルのその他の仕事において如何なる意味をもち、また如何なる根拠に基づいているかを問題とすることから出発した。この研究において明らかにすることができたことは、次の4点である。 1.『巾数の和』の無限処理の操作は、無限小量を端的に無視するところに成立したが、この操作はじつは彼の自然学においても既に用いられていたことを明らかにした。パスカルの自然学の実験デ-タが余りにも美事に仮設に適合しすぎているといった疑念が、これまでにも提起されてきたが、この研究ではこのデ-タの処理の仕方が『巾数の和』における無限処理の仕方に関係のあることを明らかにした。 2.パスカルが自然学の次に取りあげた仕事は『算術三角形論』であるが、この論文は数学史の上では数学的帰納法が完全な形で始めて用いられたことで有名である。本研究は、上記の『巾数の和』の無限処理の操作がまた、この数学的帰納法の操作とかかわりのあることを明らかにした。何れもが、無際限に進行するものをひとまとめにして、無限として処理する手続を核心にすえている。 3.次に、この無限処理の操作が根本的には、パスカルの『正弦の和』における微小三角形を処理する操作にもつながることに注目し、さらにこの操作の思想的根拠が、有名な彼の三秩序論の思想に源泉をもっていることを明らかにした。 4.パスカルの『恩寵文書』は、イェスイタ派とカルヴァン派に対してジャンセン派が如何なる点で異なるかを指摘しているが、この指摘を分析することを通じてジャンセニズムの予定説の独自性を明らかにし、この点とパスカルの三秩序論との関係を明らかにした。
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Research Products
(2 results)