1989 Fiscal Year Annual Research Report
シロネズミにおける視覚機能の補償作用に関する生理心理学的研究
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63510042
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
八木 文雄 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (60124814)
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Keywords | 片眼摘出 / 非交叉性情報系 / 視覚系 / 視覚野 / 破壊 / パタ-ン弁別学習 / Hooded Rat / シロネズミ |
Research Abstract |
シロネズミでは、幼若時に片目を摘出しておくと、残存目と同側の非交叉性情報系に補償作用としての再編成が生じ、この系に機能的増大が見られるようになる。われわれはこの様態を、電気生理学的側面と行動的工面から分析してきたが、後者の分析からこれまでに得られた基本的事実は、この種のネズミ(OEB)が成長した段階で白黒弁別学習を課し、完成後に残存眼と反対側の視覚野を破壊して同一課題を再学習させると、成長後に片眼を摘出したもの(OET)に較べて、著しく早くそれが完成するのに対して、パタ-ン(縦縞-横縞)弁別学習では、両者ともに300試行の訓練によってもその完成は不可能であり、幼若時の片眼摘出により残存眼と同側の視覚系に出現する機能的増大が行動面に反映される様態には、課題依存的な制約が認められるということである。 そこで本年度においては、昨年度までに得られた以上のような事実にもとづいて、これがシロネズミの視覚系の機能に特異的にて現象であるか否かを探るための1つの手段として、Hooded Ratのパタ-ン弁別行動について検討し、以下の研究成果を得た。つまり、OEBとOETについて両側の視覚野が健全な状態で縦縞-横縞(白、黒がそれぞれ10mm間隔で交替)弁差別学習を課し、学習基準達成後、残存眼と反対側き視覚野を破壊した状態で同一課題を再学習させると、OETに較べてOEBの再学習行動がかなり速く完成する。また、こうしたことは残存眼と反対側の視覚気を破壊した状態での形成事態においても認められる。以上のことから、Hooded Ratでは、シロネスミの場合とは異なり、幼若時の片眼摘出により残存眼と同側の視覚系に出現する機能的増大が、パタ-ン弁別行動においても機能的な補償作用を持つものとして反映されることが示唆される。なお、視力を指標としたより詳細な分析が今後検討すべき継続課題として残された。
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[Publications] Ikeda Y.,Sakai M.,and Yagi F.: "Effects of superior colliculus lesion upon a black-white discrimination learning in the albino rat with one eye removed at birth." Physiology & Behavior. 43. 657-663 (1988)
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[Publications] Yagi F.,Sakai M.,and Ikeda Y.: "Effectsof delayed monocular enucleation after birth upon black-white discrimination learning in the albino rat." Physiology & Behavior. 45. 1011-1015 (1989)
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[Publications] 池田行伸,酒井誠,八木文雄: "シロネズミの片眼摘出による視覚系の再編成-成熟時脳梁切断の効果-" 日本心理学会第53回大会発表論文集. 507 (1989)
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[Publications] 酒井誠,池田行伸,八木文雄: "シロネズミの片眼摘出による視覚系の再編成-交叉性視覚路遮断のパタ-ン弁別学習におよぼす影響-" 日本心理学会第53回大会発表論分集. 508 (1989)
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[Publications] 八木文雄,酒井誠,池田行伸: "Hooded Ratの片眼摘出による視覚系の再編成-パタ-ン弁別課題の再学習に及ぼす残存眼と反対側の視覚野破壊の効果について-" 日本心理学会第53回大会発表論文集. 509 (1989)
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[Publications] 八木文雄[西川泰夫(編)]: "「現代心理学への招待」(分担執筆部分:第6章 神経心理学)" 八千代出版, 300ペ-ジ (1989)