1988 Fiscal Year Annual Research Report
MRIによる能損傷部位と高次機能との対応に関する神経心理学的研究
Project/Area Number |
63510048
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河内 十郎 東京大学, 教育学部, 教授 (30083710)
|
Keywords | 脳損傷 / 病巣部位 / MRI / 純粋失読 / 失読失書 |
Research Abstract |
現在神経心理学の分野で、病巣部位と臨床症状との関係が明確にとらえられ、発現機序がほぼ解明されている高次機能障害の一つに純粋失読があり、書字言語の中枢にあたる左半球頭頂葉後部皮質、角回に書字情報が到達しないためとして説明されている。この理論は既に前世紀の終りに、左半球後頭葉内側部の視覚投射野と能梁膨大部に病巣を持つ純粋失読例を報告したDejerineによって提唱されており、以降多数の症例によって確認されているが、最近では、Dejerineの示した古典的な病巣以外でも、書字情報が左半球角回に到達しないかたちの病巣であれば、純粋失読が生ずることが明らかにされ、非古典型純粋失読と呼ばれている。 研究代表者は昭和63年度には、3例の純粋失読例と1例の失読失書例の病巣をCT、MRIによって確認し、従来の純粋失読に関する理論の妥当性を立証することができた。症例1はCT、MRIでは古典的純粋失読と診断され、剖検によって能梁膨大部の損傷が、近辺の皮質損傷による二次性のものであることが確認された。症例2は、CT、MRIにより、左半球後頭葉内側部深部白質の病巣が明らかにされ、視覚連合野から角回に出る線維の切断と判定された。このタイプは、左側脳室後角の下外側に病巣があることから、後角下外側型非古典型純粋失読と名づけられた。第3例は左角回直下の深部白質に病巣が確認され、角回直下型非古典型純粋失読と名づけられた。第4例は失読失書例にあたるが、病巣が左後頭葉深部白質から外側面の皮質にまで及んでいる点が、失書を呈さなかった第2例と異っていた。この病巣から、後頭葉内側部から外側部にかけてのわずかな損傷により、失書の有無が決ってくることが明らかにされた。
|
Research Products
(2 results)