1990 Fiscal Year Annual Research Report
視覚性認識の脳内機序に関する連続的情報処理仮説の行動学的検討
Project/Area Number |
63510086
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
柳沼 重弥 東京都神経科学総合研究所, 医学心理学部門, 主任研究員 (90174490)
|
Keywords | 視覚性認識 / 連続的情報処理仮説 / マカクザル / 下部側頭回 / 視覚前野 / 離断症状 / 視覚記憶中枢 / 皮質摘除 |
Research Abstract |
視覚性認識の脳内機序仮説としての連続的情報処理仮説の妥当性を行動学的に検討した。 1.被験体として9頭のマカクザル(アカゲザル及びニホンザル)を用いた。このうち3頭は、一昨年度に、視覚前野皮質のうち下部側頭回に神経繊維の投射を行う領域の摘除を、他の3頭は下部側頭回皮質の全域摘除を受けたサルである。皮質摘除は吸引法により、両側性に、無菌的に行った。残りの3頭は無手術統制群として、昨年度に訓練を開始したサルである。 2.各試行毎の新奇物体対を用いる遅延見本合わせ課題を用い、上記摘除群の障害を調べた。この課題は視覚性記憶のうちでも、特に視覚性認知記憶のテスト課題とされている。テスト装置はウィスコンシン式一般テスト装置の一部改良型を用いた。合計200個の物体で100組の対をつくり、1試行1組づつ使用し、100試行毎に組みかえて使用した。基本課題では、見本物体サンプリング期とマッチング期間の遅延時間は10秒で訓練した。基本課題学習後、遅延時間を30秒、更に60秒に延長し、各条件で100試行中の正反応率を調べた。 3.テスト終了後、脳摘除ザルの脳切片標本を作製し、摘除域の組織学的検討を行った。 4.視覚前野皮質の摘除により、遅延見本合わせ課題で下部側頭回皮質摘除に類似の障害が生じることが明らかになった。しかし、基本課題修得でも、延長された遅延条件でも、障害の程度は下部側頭回皮質摘除に比べれば軽かった。前年度までの知見と併せてこの知見は、視覚性記憶中枢野である下部側頭回前半部で、視覚前野摘除後には、かなりの機能脱落が起こるが、その場合にも残存機能が存在し得たことを示唆している。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 柳沼 重弥: "視覚性認識の脳内機序に関する連続的情報処理仮説の行動学的検討(2)" 日本心理学会第54回大会発表論文集. 447 (1990)
-
[Publications] Yaginuma,Shigeya.: "Functional subdivisions of area TE of the inferotemporal cortex in the monkey." in Iwai,E.and Mishkin M.(ets):Vision,Memory,and the Temporal Lobe.Elsevier(New York). 29-41 (1990)
-
[Publications] Yaginuma,Shigeya.: "Visual impairment in monkeys following lesions of the central lateral portion of the prestriate cortex." The proceedings of XIIIth Congress of the International Primatological Society.
-
[Publications] 柳沼 重弥: "視覚性認識成立に関する連続的情報処理仮説の行動学的検討" 東京都神経科学総合研究所研究紀要. (1990)
-
[Publications] Yaginuma,Shigeya.: "Visual deficits in monkeys with lesions of the prostriate cortex." in Ono T.and Squire L.R.(eds):Brain Mechanisms of Perception and Memory:From Neuron to Behavior.Oxford University Press. (1991)
-
[Publications] 柳沼 重弥: "マカクザル視覚前野摘除による視覚性認識障害の特性" 日本心理学会第55回大会発表論文集. (1991)