1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510088
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
白井 宏明 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (40015920)
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Keywords | ムラ / 家連合 / 再分配 / 互酬性 / 贈与交換 / 交換システム / 共同体 |
Research Abstract |
本年度の研究計画にしたがって、福島県矢祭町宝坂において、全世帯(95)を対象とした面接調査を行った。これは1980年に独自に実施した戸別調査を補充する形で行い、主な調査項目は、世帯の構成・家の来歴・農業経営の実態・共同諸関係の実態などである。 さらに比較のための具体的な視点を得るために、都市近郊の平場農村でしかも急速なベッドタウン化を経験した村落として、千葉県市川市原木を取りあげ、土地の古老からの聞き取り調査を行なうとともに区有文書等の文献資料の収集および筆写を行なった。本年度の研究において得られた主な知見は、以下の通りである。 1.山間と平場、純農村と大都市近郊という生産・生活条件の差異にもかかわらず「高度成長」期までの両村落に共通していたのは、「再分配」システムにおける「中心点の社会組織」(K.ポラニ-)として部落機構の働きがあったこと、即ちその中核をなす役職構成は土地所有による階層性を示し、これが「再分配」における負担と享受との家との不均衡を補償ないし強制する働きをしていた。また互酬的贈与交換システムとしての互助組織は「再分配」システムとしての協同組織の範囲内に成立している。さらに部落機構は行政補完的になるにつれて中心点としての働きを失ってゆくこと、などである。 2.他方両村落における差異は、部落機構の中心点としての働きはあって、これは農業からの家々の離脱の程度に依存していること、またその強制メカニズムは行政権力と地主制に影響されていること、最後に互助組織が集団的構成をもつ(宝坂)か対称的構成をもつ(原木)は、山間の小集落連合か平場の街道筋集落かという、村落形式の地理的・歴史的条件に規定されていること、などである。
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Research Products
(1 results)