1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510106
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
阿閉 吉男 創価大学, 文学部, 教授 (40022321)
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Keywords | ドイツ / ドイツ社会学 / 都市 / ゲオルク・ジンメル / マックス・ウェーバー |
Research Abstract |
「ドイツ社会学の歴史的展開」を研究するにあたって、ドイツの生の哲学者・社会学者ゲオルク・ジンメル(1858〜1918)をとり上げることはきわめて重要である。今回昭和63年度文部省科学研究費一般研究(C)補助金を下付されたので、一応かれの都市論を扱うことにし、裏面記載の研究実績を収めた。その概要は以下のとおりである。 ジンメルはプロイセンの首都ベルリンの中心に生まれてエルザス-ロートリンゲンの州都シュトラースブルクで没したので、もともと都市と無縁ではない。したがって、かれが都市について論じたこともこうしたこととかかわりがある。事実、かれは初期の大著『貨幣の哲学』(1900)とのちの講演「大都市と精神生活」(1903)のなかで都市を扱った。前者では大都市人について、後者では大都市人と小都市人についてふれられている。とりわけ、後者は「都市の社会心理」を扱った。 こうした点からみて、ジンメルは都市社会学の創始者と目されてきた。そうしてかれは初期いらい心理学的・形而上学的視点からイタリアの三都市ローマ、フィレンツェおよびヴェネチアに注目した。これは「都市生活の力学」といってよく、この点を解明することが第一に行われる。 第二に行われるのは「都市の社会心理」の解明である。ジンメルは「小都市の心的生活」を「情緒と感情的諸関係」のうちに求めると共に、「大都市の心的生活の主知主義的性格」を認め、大都市人が小都市人のもつ狭量と偏見とは正反対に大都市の雑踏のなかで感じられるような「自由」であることを認める。 以上の二点を解明したのち、ジンメルがアメリカの都市社会学つまりシカゴ学派の都市社会学に与えた影響についても言及した。この点はこれまで無視されてきたものである。これを踏まえて今後は「ジンメルの空間像」にアプローチするつもりである。
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