1989 Fiscal Year Annual Research Report
近世戸籍史料をもちいたムラ・マチの家族構成と周期的律動及びライフコ-ス研究
Project/Area Number |
63510111
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高木 正朗 立命館大学, 産業社会学部, 助教授 (70118371)
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Keywords | 歴史人口学 / 人口変動 / 家族構成 / 家族周期 / ライフコ-ス |
Research Abstract |
今(平成1)年度は、岩手県下油田村の史料によるlife-course研究を中心に置いたが、幾つかの理由でライフコ-ス第2次シ-トの作成のみに終わった。従って、研究は以下の2つに絞らざるを得なかった。1.近世農民の家族・人口の状態を左右したと推定される、封建領主(仙台藩)の土地=農業政策の展開を総体的かつ時系列的に把握する事。2.直系家族制度の下で時々現れる複合(compound/joint)家族の出現理由を、life-cycle途上で現れるcrisisの1つの回避戦略であったと見なし得るか否かを解明する事である。以下、各々に対する知見を記述する。 1-(1)農業=土地政策と家族=人口政策は、当然だが密接に連関させて施行され、領主支配の根幹を形成した。(2)戸籍と労働力把握機能をもつ人数改制度は、藩が本格的に人口維持・増加策を講じる必要に迫られ、調査を徹底させた結果、地域に浸透し17世紀末〜18世紀には多くの村で帳面が作成された。(3)30歳以下土地無し次三男を結婚禁止とその解除を述べた通達は、人口制限の方法が間引き・堕胎のみで無かった事を示唆する。(4)藩儒者の上申書では、農民の消極的人口制限は従来の生活水準を低下させたくないという動機をも指摘しており注目される。 2-(1)直系家族は、そのdevelopmental cycleにあらかじめ困難・危機が予測される際には、早めに養子、婿、嫁を取るなどの対策を講じるが、一部の上層世帯は末弟1人を家に留めて結婚させ、large familyを形成した。19世紀磐井郡農村でのその出現率は概ね5%以下と見てよい。(2)兄弟2つのunit(核家族)で構成されたこの世帯では、家計に貢献した弟の不満を回避する為に1回は彼に戸主権を与えたり、従兄弟婚(cousin marriage)をさせたケ-スもある。(3)compound typeをとった世帯はほとんどが従来の農地を維持したか、拡大できた。(4)中には、P.Laslettのfrereche,YugoslaviaのzadrugaあるいはRussiaのdvorなどの世帯共同体と似た構成が見られる。しかし、我々の史料に散見されるjoint/compound typeは、あくまでも直系制の1局面で現れる家族形態に過ぎない。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 高木正朗: "都市町内のPopulation Dynamics-19世紀奈良町「人数増減帳」にみる-" 立命館産業社会論集. 25巻-1号. 167-192 (1989)
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[Publications] 高木正朗: "都市家族の構成と変動-19世紀の奈良町内-" 立命館産業社会論集. 25巻-2号. 127-173 (1989)
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[Publications] 高木正朗: "直系制家族のLife-Cycle Crisisと複合家族構成-19世紀東北農村の「人数改帳」分析-" 立命館産業社会論集. 25巻-3号. 1-61 (1989)