1989 Fiscal Year Annual Research Report
日米両国における教科書行政の法的原理と実際的態様に関する比較研究
Project/Area Number |
63510156
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Research Institution | Takamatsu Junior College |
Principal Investigator |
古賀 一博 高松短期大学, 児童教育学科, 講師 (70170214)
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Keywords | 教科書 / 教科書行政 / 米国 / 教育法 |
Research Abstract |
本年度も昨年度につづき、州集権的教科書行政機構を有する典型州の一つであるカリフォルニア州に注目して、同州教科書行政の歴史的変容過程を事例的視点から分析、考察することによって、米国教科書行政の一類型の解明を試みた。 特に本年度は、第二次大戦前後を中心とした同州教科書行政の変容状況を取り上げ、そこに見られる集権的教科書行政の問題点を考察した。伝統的に州政府の規制機関としての州教育委員会に教科書行政を始めとする公教育全般にわたる極めて大きな権限が付与されて発足した州集権的教育行政システムは、その後、素人集団としての同委員会に必然的に存在した専門的教育識見の不足を補うために、個別専門領域においてより能率的、合理的業務遂行を意図した専門家委員会が設置されることにより、同システムの補完的機能が達成され、その弱点補強が図られるように変容発展してきた。しかも、それらの専門委員会の設置及びその構成さらには実際の運営を分析する限りでは、いわゆる地方レベルの多様な教育要求を可能な限り反映しようとする意志が感じられ、法制度上州に権限を集中した形態を有するものの、極めて民主的システムとして機能し得ていたと考えられる。 しかしながら、かかる発展過程をして成長してきた同州教科書行政システムも、大戦前後の時期に特に看取される右傾向を有する政治的、社会的状況には無防備に近く、それまでいわば健全な発展過程をとげてきた同システムも、一時的停滞期に陥らざるを得なくなった。不当な政治的圧力に影響されないシステムの構築が問題点としてのこされた。
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