1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510182
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
菊池 勇夫 宮城学院女子大学, 学芸学部, 助教授 (20186191)
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Keywords | 飢饉 / 天明の飢饉 / 飢饉供養塔 / 施行小屋 / 飢人 / 乞食 / 盛岡藩 / 非人 |
Research Abstract |
三年計画の最終年度にあたる今年度は、まず飢饉史料の収集を継続的にすすめ、遠野市立図書館、一関市立図書館、鶴岡市郷土資料館、酒田市立光丘図書館、市立米沢図書館、八戸市立図書館、および岩手県立図書館において、おもに藩政史料を中心に史料収集した。こうした三年間にわたる調査によって、東北地方における主要な文献史料蔵機関はかなり歩いたことになり、複写によって収集した史料のリストは、研究成果報告書に掲載した。また、飢饉供養塔などのもの史料の実地調査は、本研究の期間内におこなうのは不可能であったので、文献による所在確認にとどめ、このリストも研究成果報告書に載せた。今年度の後半は、研究成果報告書をまとめる作業が中心となり、上記リストのほか、「飢饉のなかの民衆と領主権力一天明飢饉下の施行小屋を中心にー」と題する研究論稿を執筆し、報告書に掲載した。この論稿は、民衆の生活史のなかに飢饉・飢餓を位置づけてみる、あるいは飢饉・飢餓をとおして近世の社会をとらえなおしてみるという関心から、とりわけ餓鬼道の世を現出させた天明の飢饉を例にとりながら、飢えて流浪した民衆に焦点をあて、従来為政者の救恤事業として触れられてきた施行小屋をとりあげたものである。奥羽各藩の施行小屋の実態をできるだけ具体的に示しながら、施行小屋の機能、特質を飢人と領主権力をめぐる政治的ないし社会的関係のなかで論じている。報告書には掲載しなかったが、同様の関心で、宝暦の飢饉時の盛岡藩における施行小屋についても執筆を終えており、刊行予定の論集に収録されることになっている。以上二本の論稿の他にも、損毛高の問題、食人・食肉などの餓鬼道の実態、餓死者の供養といったテ-マについても論文作成を企図しており、そのための準備もまた進めてきた。
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