1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510187
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Research Institution | Yokohama College of Commerce |
Principal Investigator |
飯島 千秋 横浜商科大学, 商学部, 助教授 (90151224)
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Keywords | 幕府財政 / 財政帳簿 / 幕府貯蓄米金 / 奥金蔵金 |
Research Abstract |
年度当初に提出した計画に従って課題研究を継続した。今年度は、天明期幕府財政の考察と幕府貯蓄米金の実態解明をすすめた。天明期幕府財政状況に関する史料として、徳川林政史研究所所蔵「当申年御入用積書付」がある。京都御所炎上に伴う普請費用が計上されていることから、この帳簿は、天明8年の年度途中に作成されたさとがわかる。こうした見積書を作成するという事例は既に享保15・16年にあり、初めてというものではないが、この時期が田沼期から寛政期への移行期にあたっているという点で注目すべき史料といえる。見積書という史料的限界性から、当該年の正確な財政状況を把握することは困難であるが、大凡の状態は把握できよう。この帳簿から判明したのは以下の諸点である。1.幕末期財政帳簿では明確となる「定式」(経常収支)と「別口」(臨時収支)の区別ができつつあり、この頃から財政会計上の変化が生じたと想起せしめること、2.総収支は、金方が総収入143万両余、総支出139万両余、米方が総収入52万石余、総支出が47万石余であったこと、3.年貢金収入は66万両余で、享保15年の50万両余を大きく上回っていること(ちなみに翌寛政元年は66万両余でほぼ同水準である)。幕府貯蓄米金の実態については、幕府保有の金蔵・米蔵について史料募集を精力的にすすめているが、奥金蔵金については、享保期以降の推移を把握することができた。奥金蔵金は、1.もっとも貯蓄高が多かったのは明和7年からの天明6年までの間で171万両余であること、2.もっとも少ないのは享保7年の13万両余であること、3.奥金蔵金は文政期以降貨幣改鋳金として頻繁に利用されるようになること、4.文久元年段階で60万両余であったこと、等々の点が明らかとなった。上記二つの問題については、さらに研究を深めていきたいと考えている。
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