1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510190
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Research Institution | Kanto Junior College |
Principal Investigator |
高木 侃 関東短期大学, 商経科, 助教授 (40099198)
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Keywords | 駈込み / アジール / 縁切寺 / 満徳寺 / 東慶寺 |
Research Abstract |
1.まず東北地方を中心としたアンケート調査によって、盛岡南部藩に関する縁切り駈込み史料が相当存在することが判明したこと、また八戸藩においては火事の火元入寺についての新知見が得られたことが挙げられる。 2.火事の火元入寺は全国的に行われた慣行と推測していたが、福井県内の調査を通して、その地域にもともと火事の火元入寺の慣行があったということよりも、大名(支配者)側にそれを許容する法意識が存在することの方が主要な要因と考えられること、なぜなら、福井藩での火事の火元入寺は高崎藩から転封になった間部家が高崎での慣行を移入したと推定されるからである。 3.また、縁切り駈込みについては、従来まったく知られていなかった甲斐国の事例や被差別部落内における事例が見いだされた。特に後者によって、被差別部落内という一定の階層において、上位の小頭宅への駈込みがあったということは、駈込みの性格を理解する上で、被駈込みの場が社会的に優位にある者の場である点が明確になったと思う。 4.なお、昭和63年度の具体的成果の一つは、いわゆる満徳寺離縁状「深厚之宿縁浅薄之事不有私、後日雖他え嫁、一言違乱無之」の前半部分を模倣した離縁状が周辺地域にかなり広範囲に流布していたことをめぐって、その意義を解明したことと、それを日本古文書学会において口頭発表し、かつ資料収集に群馬県史編纂室の協力をえたので、『群馬県史研究』第29号に掲載したことである。 5.縁切寺満徳寺から約4キロメートルしか離れていない岩松満次郎家と、満徳寺の隣家である正田家での縁切り駈込み受容は、ともに満徳寺の影響である。これらをふまえた上で、鎌倉の東慶寺との比較をなしつつ、次年度の具体的成果として、『縁切寺満徳寺の研究』をまとめる予定である。それが近世における駈込み(アジール)の普遍性と特殊性を理解し、グローバルな観点から「駈込み(アジール)に関する実証的研究」としてまとめるための総合研究の展望につながるからである。
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Research Products
(2 results)