1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510199
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
松田 孝一 大阪国際大学, 経営情報学部, 助教授 (70142304)
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Keywords | 元 / 三十七翼 / 軍事制度 |
Research Abstract |
元代の軍制研究のうち地方の軍事体制の解明は最も遅れた分野である。元は1276年1月南宋の首都臨安の陥落とそれに続く、元軍の作戦で南宋政権を壊滅させ、1285年元朝は中国全土の支配の体制の根幹として「三十七翼の体制」を施いた。本研究者は、本年度、この軍事体制についての考察を行った。「元史」や元代の政典などの関連資料を国内各地の研究機関などにより収集整理し、カード化し、一部は大阪大学の電算機を使用し、データ・ファイル化した。三十七翼軍団は河北の首都大都を防衛することを主眼として設立されており、そのほとんどが河南一帯に集中して展開されており、江浙、江西、湖広の3行省には殆ど配備されていない。元はこの三十七翼以外に四つの蒙古軍都万戸府をやはり旧南宋領との接壌地帯に配置しているが、三十七翼軍団は、主として、この主力軍団を外側へ取り巻く形で展開されており、黄河以北を楊子江以南からの攻撃から防衛することを意図したことが明白である。この軍団の兵員は、南宋平定作戦に参加した軍団に新たに南宋領の兵員を付加して編成された。従って、蒙古、色目、漢人を中心として南人を加えた混成軍であった。江南の主要拠点に配備された各翼軍団は、それぞれ河北の主要な路ごとに編成された軍団を単位として、数単位が一つに統合され、万戸府を構成していた。万戸隊の万戸、ダルガチや千戸の地位の殆どは、蒙古が占めた。各単位(各翼万戸府と同じく、これも河北の地名を冠した翼の名で呼ばれた)の兵員は、一定年限で本貫すなわちアウルックの人員と交代し、消耗の防止が図られていた。
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