1988 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける婦人参政権運動の-考察-「婦人参政権協会国民同盟」をめぐって
Project/Area Number |
63510207
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
河村 貞枝 富山大学, 人文学部, 教授 (70111911)
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Keywords | イギリス近代女性史 / フェミニズム / 婦人参政権運動 / 婦人参政権協会国民同盟 |
Research Abstract |
今年度の研究の実際は、ほぼ交付申請書に記載した研究計画に沿ってなされた。(I)、NUWSSの変遷の通史的再検討について。NUWSSの前史(1867-1897)の婦人参政権運動の吟味によって、1897年のNUWSSの創立の意義を明確にすることができた。すなわち、前史の運動の不首尾、とりわけ組織の離合集散の経験がNUWSSの堅固な民主的組織づくりに生かされたということである。次に、NUWSSの中心的時期の流れを詳細に検討した。とりわけ、婦人参政権の調停法案をめぐっての、従来不明瞭であったNUWSSの対応について明確にすることができた。さらに、第一次大戦直前にNUWSSが、一般大衆の世論および諸政党の婦人参政権にたいする態度を改宗させるうえで、実質上大きな力を有したことを確認し得た。このことは、ライヴァル組織の過激派サフラジェット(WSPU)のありかたとの対比がより一層NUWSSの「リスペクタブル」な存在の影響力を強めさせたことにもよる。1989年の制限付き婦人参政権成立以後のNUWSSについて、次年度の課題として残されている。(II)、NUWSSの組織の分析について。NUWSSの初期に関しては、いまだ不明な部分が多いのであるが、1907年から1913年にかけての支部数、会員数、資金の増加の実態については把握することができた。また、WSPUよりもむしろNUWSSのほうが労働者階級女性を引きつけ得たということが実証的に確認できた。NUWSSの政策と戦術に関して、ロンドンの中央団体と地方諸支部との間にどの程度の不協和音があったか、とくに地方の諸団体の、運動全体にたいする寄与の程度についての考察は今後の課題である。
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