1989 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける婦人参政権運動の一考察--「婦人参政権協力国民同盟」をめぐって
Project/Area Number |
63510207
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
河村 貞枝 富山大学, 人文学部, 教授 (70111911)
|
Keywords | 婦人参政権協会国民同盟 / サフラジスト / フェミニズム / イギリス女性史 / 婦人参政権運動 |
Research Abstract |
今年度の研究の実際は、ほぼ交付申請書に記載した研究計画に沿ってなされた。まず、NUWSS(婦人参政権協力国民同盟)のロンドンの本部と地方諸支部との関係について。同盟の構成団体は、大戦直前には四百以上にも増大していたが、その中でも重要かつ詳細な記録がマイクロフィルム化されているグラスゴ-協会をケ-ス・スタディとして採り上げ、とくにその執行委員会の議事録を検討した。その結果、グラスゴ-協会とロンドン本部協会、それにその他の地域の婦人参政権諸組織の間で絶えざる、ときには激しい意見の交流が運動の経過の中で行われていたことを確認した。またNUWSSの中央機関紙が常時スコットランドの運動の報道にスペ-スを割いていたこともわかり、ロンドンに偏ったWSPU(女性社会政治同盟)と違って、NUWSSの地方諸支部の自立性・重要性が明らかになった。次に、第一次大戦勃発に対するNUWSSとWSPUの両団体の対応のしかたについて。戦争に対するサフラジストたちの対応は実に多様であったが、とくにインタ-ナショナルな反戦運動におけるNUWSSの多くのメンバ-の重要性を指摘できる。従来の婦人参政権運動史が極端な愛国主義に走ったWSPUに焦点を絞りすぎていたことが運動全体に対する誤解を生んだと言えよう。NUWSSやその外の立憲主義的諸団体は戦争前夜に着実にその力を増しており、1918年の婦人参政権獲得において戦争は決定的ファクタ-ではないし、戦争はむしろ女性への選挙権の付与を遅らせたとさえ論証できる。NUWSSの戦前及び戦争中野政治的活動を綿密に調べ直すことによって、女性の戦争協力への感謝のしるしが1918年の婦人参政権付与であったという伝統的通説を覆し得る多くの知見を得たことは今年度の重要な研究成果である。
|