1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510241
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
兵藤 裕己 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (90173202)
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Keywords | 盲僧琵琶 / 地神盲僧 / 語り物伝承 / 段物 / オーラルコンポジション / 肥後琵琶 |
Research Abstract |
盲僧琵琶の調査・研究は、従来おもに郷土史関係の研究者によって進められてきた。盲僧の分布・盲僧座の歴史等については、地元研究者による地道な研究が積み重ねられている。しかしそれらの研究では、郷土史的な関心を主にするため、たとえば盲僧の語り物伝承や宗教儀礼の分析、また(特に私にとって関心のある)語り物の生成・伝承の仕組み、オーラルコムポジションの問題等については、ほとんど言及されていないと言ってよい。 今日九州の各地および中国地方西部に残存する盲僧琵琶は、(1)段物(長編の語り物)の伝承に、台本・譜本の類を使用しないこと、(2)段物や端歌の演唱はあくまで副業であり、本業は宗教儀礼(祈祷・卜占等)にあること、など、中世の語り物伝承のあり方を今に伝える貴重な存在である。盲僧の語り物伝承の研究は、一地方の民間芸能の調査・研究というにとどまらず、中世の語り物(平家物語、他)の研究についても、ある普遍的な研究視点を提起しうるはずである。 本年度は、とくに熊本県地方に伝承される肥後琵琶に焦点をあて、各市町村の教育委員会・公民館等が保管する録音資料を収集(ダヴィング)して翻字し、また、現存する唯一の伝承者である山鹿良之(88才)の録音・映像資料を可能なかぎり、数多く作成することに努め、次年度以降に継続する分析的研究のための準備に努めた。おもに段物を中心に資料を収集・作成したが、とくに同一伝承者による同一の外題の録音(時と場所が異なる)を数種類ずつ入手できたことは、上記の研究を進める上での大きな収穫であった。また、琵琶の伴奏については、録音資料を翻字する過程で、いくつかのパターン(多くても十種類程度)に分類できる旋律型を抽出した。来年度は、資料収集を継続する過程で、伝承者へのインタヴューを通して、抽出した旋律型の呼称・琵琶の弾法などを明らかにしたい。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 兵藤裕己: 文学. 56-8. 78-95 (1988)
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[Publications] 兵藤裕己: 文学. 56-9. 52-64 (1988)
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[Publications] 兵藤裕己: 国文学(解釈と鑑賞). 53-9. 72-78 (1988)
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[Publications] 兵藤裕己: 国文学(解釈と教材の研究). 34-1. 118-123 (1989)