1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510241
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
兵藤 裕己 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (90173202)
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Keywords | 盲僧琵琶 / 肥後琵琶 / 語り物 / カマド祓い / 荒神祓い / 段構成 / 琵琶語り / 曲節 |
Research Abstract |
前年度に引きつづいて、肥後の盲僧琵琶伝承者、山鹿良之氏の伝承する語り物伝承を、可能なかぎり数多く(特定の演目については、同じものを数回)録音することにつとめた。なにぶんにも高齢のため(今年三月で満九十歳)、こちらが期待するとおりには資料作成はすすまないが、それでも四十時間ぐらいの語り物演唱の録音・映像資料を作成し、また諸所にお願いして昔の録音などをダヴィングさせていただいた。山鹿氏からは、すでに節付けや段構成の仕組みに関する聞き取り調査をしており、作成した録音資料を字起ししながら、目下、節付けや段構成と、語りの生成、変容の仕組みとの関連について考察を進めている。その成果は、平成二年度の口承文芸学会の大会シンポジウム(平成二年六月二日)で発表する予定である。また昨年四月、山鹿氏にとくにお願いして、カマド祓い(荒神祓い)の儀礼を二度にわたって行っていただき、録音・映像資料を作成した。その資料をもとに、宗教儀礼と語り物演唱との相互関連を考える上でいくつかの手がかりを得ることができた。 なお、山鹿氏は、肥後琵琶伝承者のなかでも、ほとんど希有なほど、多くのレパ-トリ-を保持する伝承者である。私が山鹿氏を中心に考察を進める理由だが、しかしおなじ肥後琵琶伝承者として、ただ一つの段物(一時間程度)を伝承する橋口桂介氏からも、節付け、段構成に関する聞き取りを行い、琵琶語り(山鹿良之氏の伝承)を研究するさいの補助的資料とした。
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