1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510248
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
永井 猛 米子工業高等専門学校, 一般科目, 文部教官(助教授) (80164383)
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Keywords | 古狂言台本 / 宮島歴史民族資料館能楽資料 / 大蔵八右衛門派 / 伊藤源之丞本 / 伊藤芳蔵本 / 宝暦鳳竹本 / 大蔵虎光本 |
Research Abstract |
狂言流派の中で、現代も演じ続けられているのは大蔵流と和泉流の二流のみだが、江戸時代には鷺流、大蔵八右衛門派(大蔵流の分家)等があり、各流派が芸を競い、互いに影響を与えあっていた。各流派の芸質については、残された台本の比較検討によらねばならぬが、ただ、大蔵八右衛門派の台本が未紹介であり、芸質も謎に包まれたままであった。昭和63年度は、それまで私が調査を進めてきた宮島歴史民俗資料館に寄託されている狂言資料の中から、大蔵八右衛門派の現存最古のまとまった台本と推定できる伊藤源之丞吉高筆狂言台本(略称「伊藤源之丞本」)の調査と翻刻紹介に全力を傾けた。伊藤源之丞本は全17冊(狂言170曲所収)あり、一度に翻刻紹介するのは時間的にも経費的にも無理なので便宜的に上下2巻に分けて、前半9冊を昭和63年春に刊行し、後半8冊を平成元年春に刊行することにした。下巻には、成立年代の推定、資料的な位置付け等の考察を含む解説を付した。この刊行によって、今まで学界に知られていなかった、大蔵八右衛門派の狂言の具体相が明らかにできた。伊藤源之丞本は大蔵流の古台本の中でも、大蔵弥右衛門虎明筆狂言台本に次ぐ二番目に古い台本であり、江戸初期から中期にかけての狂言の変遷をたどる上でも貴重な資料を提供してくれる。平成元年度以降の大蔵八右衛門虎光筆狂言台本(略称「虎光本」)の調査によって、大蔵八右衛門派の芸質はほぼ把握できるものと期待している。また、昭和63年度には、宮島歴史民族資料館に寄託されている狂言資料の中に囃子の譜等も含まれており、囃子伝書に詳しい法政大学能楽研究所の中山玲子氏に委嘱して調査していただいた。宮島の囃子関係文書については山中氏に書誌を付した目録を作成していただき、『宮島の歴史と民俗』に発表予定である。
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[Publications] 永井猛・高橋修三: "宮島大蔵流狂言台本 伊藤源之丞本 上" 米子工業高等専門学校国語研究室, 1-167 (1988)
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[Publications] 永井猛、高橋修三: "宮島大蔵流狂言台本 伊藤源之丞本 下" 米子工業高等専門学校国語研究室, 1-170 (1989)