1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510254
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐々木 充 新潟大学, 教養部, 助教授 (60105228)
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Keywords | 中層構造 / 隠喩 / イメ-ジ / フォ-クロア / 錬金術 / 表層 / 深層 |
Research Abstract |
シェイクスピア劇をイメ-ジという点から考える批評や研究はこれまでも数多く成されてきた。しかし、劇という構造体における隠喩の位置に関しては、これを明確に規定したものはない。本研究においては、特殊的には隠喩、一般的にはイメ-ジを、劇の表層と真相の間に位置する中層的存在と規定する。そして、これを様々な精神的領域における中層的存在物と対応関係にあると考える。例えば精神の真相と表層の中間にあるものとしての夢がある。また合理精神と非合理意的識の中間にある物としての錬金術やフォ-クロアがある。シェイクスピア劇における隠喩もこれと対応関係にあるならば、これらに関する学問的成果を利用することによって、シェイクスピア劇における隠喩構造を解明できるという観点から、『真夏の夜の夢』、『テンペスト』、および『マクベス』についての研究を行った。 1.『真夏の夜の夢』の中層的隠喩構造は、月の三相についてのフォ-クロアに基づいている。そして、この劇の中に現れる弓のイメ-ジもこの隠喩体系の中に組み入れられている。弓は本来呪術的要素をもっているが、それはこの劇の五月祭的要素と結び付き、さらにはロビン・フッドや、ボトムの大地的道化という本質と結び付いている。 2.『テンペスト』の中層的隠喩構造は錬金術である。「びんの精霊」という民話の話型を用いながら、それがパラケルスス伝説と結び付くことによって錬金術的隠喩構造を形成していることを明らかにした。 3.『マクベス』においてはfair is foulというモチ-フが隠喩構造の核にあり、それを中心に様々なイメ-ジが組織されていることを解明した。
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