1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63510255
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
志鷹 英行 福井大学, 教育学部, 教授 (80077495)
|
Keywords | 神の先見 / 神の慈悲 / 神の正義 / 神の支配 |
Research Abstract |
『失楽園』5巻始め近くに、神が天使ラファエルを楽園に住むアダムとイヴのもとへ差し向ける場面がある。神は無心に働く、アダムとイヴに憐れみを覚え、ラファエルを呼び、サタンの誘惑に屈して堕落した後、人間が、不意打ちを受けた。前もって警告されていなかった、と言い訳をしないように、予め必要な情報を与えよ、と命じられる。 人間に憐れみを感じた直後、人間の言い訳を封ずる為に神が天使を楽園につかわすのは矛盾である、と批評家達はこの個所を説明(?)してきた。この場面で神がなさっている事は、実は、慈悲と正義の調和である。全知の神は、一方で、ラファエルが人間に堕落後いかにして神に立ち返るかを教える事を予見された上で、ラファエルを使者として選ばれ、慈悲を示される。他方、人間の言い訳を封ぜよ、という厳命で正義を果される。筆者はこの主張を次の論拠に基いて論証した。 1.神は矛盾を犯し得ない。 2.ラファエルは天上の会議に列席している。その会議で神は、サタンが人間を誘惑し、堕落させる事、神の御子が人間の罪をあがなって人間が救われる事、を全天使に明らかにした。人間に好意的なラファエルは、避けられない堕落の後、人間がどのようにして神に立ち返るか、人間がどのような希望-神の御子が人間の罪をあがなう事-を持っているか、を人間に間接的に教えてやりたいと願っているはずである。 3.全知の神は完全な先見をもっておられる。 4.神は自らの先見によって、ラファエルの人間に対する好意を知り、天使が自分の好意を実行に移すのを許される。 以上を論文にまとめ、アメリカのMilton Quarterlyに送り、現在審査を受けている。
|