1989 Fiscal Year Annual Research Report
地域医療計画と健康権-医療政策と医療実態の調査・分析
Project/Area Number |
63520027
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井上 英夫 金沢大学, 法学部, 教授 (40114011)
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Keywords | 過疎地域 / 過疎化 / 医療 / 福祉 / 住民 / 健康 / 健康権 |
Research Abstract |
今年度は、珠洲市の医療・福祉実態調査を中心に研究を行った。調査は、7月の予備調査により対象地区を設定、調査依頼さらに基礎資料を収集した。 8月には珠洲市狼煙地区、中前田、横山、洲崎地区約100戸を対象に医療・福祉実態調査を聞き取りの形で実施した。また、90年2月には、昨年度の調査の補足として尾口村の聞き取り調査を行った。 その結果過疎地域における医療・福祉施策に重要な欠陥があり、住民の健康権が侵害され、そのことが引金になって一層過疎化が進んでいるという事態が明らかになった。 とくに、珠洲の調査対象地域は、医療機関、病床、病床数が全国有数の石川県にあって病院は勿論、診療所もなく、市立病院による週1-2回の巡回診療のみという地域である。また、福祉施設もない。この様な地域の住民は、バスで長い時間かけて市の中心部の病院に通わねばならず、その負担は大きい。とりわけ車を運転できない高齢者等にとっては通院は一日がかりである。 したがって、こうした地域の住民は病気にならないよう健康に注意して暮らすのであるが、ひとたび病気になると在宅での療養は、介護家族等よほど条件に恵まれていなければ不可能である。 そこで、家族に引き取られるか、金沢周辺の大きな施設に入所、病院に入院することになる。こうした労働力の移動(特に若年労働力)による過疎の進行の他、医療や福祉の制度が保障されないが故の「もう一つの過疎化」(高齢者や子供)が深く進行しているということを実態調査により明らかにしたことが今回調査研究の最大の成果である。
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