1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63520039
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
比屋根 照夫 琉球大学, 教養部, 教授 (10045172)
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Keywords | 戦後日本思想史 / 沖縄像 / 沖縄返還問題 / 米国統治 / 言論ジャーナリズム / オピニオン・リーダー / 民俗主義 / 国際主義 |
Research Abstract |
本研究は戦後日本における沖縄像の思想史的な変遷をたどり、戦後思想史における沖縄像の析出を試みるものである。周知のように対日講和条約の締結から1972年の沖縄返還に至る過程は、日本戦後史の中での沖縄の位置をいちじるしく異なった位相におくことになった。何よりも日本近代百年を通じて日本の国土の一部がほぼ30年に及ぶ長期間にわたって異民俗(米国)の統治下にあったということは、それ自体まさに異例の事態であった。このような中で沖縄問題は、日本の思想・文化・社会の諸領域できわめて重要な課題として、さまざまな角度から議論された。以上のような問題意識にたって63年度は、主要に1950年代を中心とする沖縄像の分析作業に着手した。その着手の手順は、(1)全国主要新聞における沖縄論の調査(2)沖縄現地の新聞社説の分析検討(3)全国主要雑誌における沖縄論の調査(4)オピニオン・リーダーの沖縄論の検討-というものである。この結果、ほぼ以上の4領域にわたって資料の収集・復写作業を完了し、目下、鋭意分析中である。これまでの分析によって明らかになったことは、戦後日本における沖縄像の形成にもっとも大きな影響を与えたのは、中央の言論ジャーナリズムの役割であった。1950年代の沖縄における土地接収問題を報道したいわゆる『朝日報道』は、そうした重要な事例である。この問題を契機に沖縄問題は、総合雑誌、オピニオン・リーダーなどがとり上げることとなり、一挙に国民的な関心を集めるに至る。矢内原忠雄、竹内好らは、この問題を民俗主義と国際主義の結節点としてとらえ、戦後日本における民主主義の試金石とみなした。こうした中央論壇における沖縄論の噴出は、やがて現地沖縄へも波及し、沖縄における復帰思想の形成にも大きな影響を及ぼすものとなる。そして、やがて50年代の沖縄問題は、日本における一連の戦後改革のあり方の議論とも連動しつつ、1960年代へと向う。
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Research Products
(1 results)