1988 Fiscal Year Annual Research Report
証券市場の理論的・実証的研究(統計学的手法の応用を中心として)
Project/Area Number |
63530008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佃 良彦 東北大学, 経済学部, 教授 (10091836)
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Keywords | 効率市場仮説 / 株式市場 / 株価収益率 / 時系列解析 / 非線形条件つき分散変動モデル / ランダム / ウォーク仮説 |
Research Abstract |
為替レートや株価等の変動性の激しい現象の解明には純粋理論的分析は必ずしも有効ではなく、統計学的アプローチの有効性が認識され、近年金融現象の解明に時系列分析が適用されつつある。本研究は日本の株価、特に株価収益率の確率的構造を実証的に解明し、株式市場の「効率性仮説」との関連で株価のランダム・ウォーク仮説を検証した。われわれは株価指数(日経平均、東証株価指数)だけでなく東証一部上場の204個別銘柄の株価系列に立ち入って、各々の銘柄の確率過程の構造を分析した。日本の株式市場の実証分析で、本研究ほど大規模かつ詳細な研究は他にないと思われる。 本研究の成果を要約する。 1.基本統計量:(1)すべての銘柄で収益率の平均に比べて標準偏差がずっと大きい(収益率の変動性が大きい)(2)大多数の銘柄で劣度が5以上(収益率の分布は正規分布よりも裾が厚い)。 2.確率過程の構造:(1)1次自己相関が204銘柄のうち150で〓の値をとる(米国株式は調査されたすべての銘柄で正の1次自己相関をもっとの複数の実証結果がある)。(2)収益率は概ね無相関過程であるが、独立ではなく、線形過程でもない。(3)条件つき分散は変化する。(4)上記(2)、(3)は非線形条件つき分散変動モデルの必要性を示す。 3.ランダム・ウォーク仮説の検証:(1)従来の検定方法は必ずしも妥当でない。(2)対立仮説を明示的に取り入れた検定方式を提案した。(3)日本の株式の約6割はなんらかの検定によりランダム・ウォーク仮説が棄却された。 4.今後の研究方向:個別銘柄の株価は相互に関連すると考えられるので、非線形条件つき分散変動モデルの「多変量」化の必要が生じる。現在、この多変量化モデルの開発にメドがついた段階であり、このモデルを利用して実証分析を行ないたい。 本研究の成果の一部は日本統計学会1989年度大会で報告の予定である。
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[Publications] Yugo,Hosoy;Yoshihiko,Tsukuda: Discussion Paper No.80 Faculty of Econonucs,Tohoku Unicersity. (1988)
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[Publications] Yoshihiko,Tsukuda: Discussion Paper No.81 Faculty of Economics,Tohoku Unmirsity. (1988)
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[Publications] Komei,Sasaki,Yoshihiko,Tsukuda,Hiroo,Shibata: 日本統計学会誌. (1989)
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[Publications] Yoshihiko,Tsukuda;Fred Dham: Annals of Statistics. (1989)
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[Publications] 刈屋武昭,佃良彦,丸淳子 編著: "日本の株価変動:ボランティリティの分析" 東洋経済新聞社, (1989)