1989 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期ドイツにおける中小経営の展開と危機-ナチズムとの関連で-
Project/Area Number |
63530044
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
柳澤 治 東京都立大学, 経済学部, 教授 (00062159)
|
Keywords | 中小企業 / 加工業 / ドイツ / 組織資本主義 / ナチズム / ワイマ-ル共和制 / カルテル問題 |
Research Abstract |
第一次大戦後における加工業・組立業を中心とする中小規模の資本主義的企業および小経営の発展は、1920年代の終わり、とくに1929年恐慌によって重大な転換点に直面する。中小資本の経営的展開は、重化学工業を中心とする独占体の発展の下で次第に停滞し、やがて過当競争の状況に突入する。そのような中で中小資本は一方では原料・半製品生産における重工業中心の独占形成に反撥しつつ、他方では自身の過当競爭状況の除去と経営的改善のために同業者組合(イヌンク)による「適正価格」の設定に期待をかけるが成功しなかった。ナチズムはこのような状況にある中小資本の利害に積極的に対応した。「フェ-ダ-網領」の分析によって明らかになったことは、ナチズムが決して資本主義的企業やその所有原則を否定するのではなく、むしろ、個人の労働や勤勉と、そのような活動の結果としての所得、さらに所有を決定的に重視し、そのような活動の所産としての個人ないし家族形態の資本主義的経営を積極的に評価したことであった。これは決してA・シュヴァイツァ-がBig Business in the Third Reichの中で強調したような「手工業社会主義」に結びつくものではなかったし、H.A.ヴィンクラ-がMittel stand,Demokratie und Nationalsozial:smusで展開したような「前工業的」な性格をもったものではなかった。それはむしろすぐれて古典的資本主義において重視されたホモ・エコノミクスの観念に重さなるものであり、反資本主義というよりまさに資本主義的であった。ナチス体制の下で、中小資本の過当競争は強制カルテル立法によって対応がはかられ、重化学工業も含めた産業構造全体の組織化が進むことになった。
|
Research Products
(1 results)