1989 Fiscal Year Annual Research Report
レ-ガン政権下における連邦補助金制度の改革とその背景についての研究
Project/Area Number |
63530054
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 英男 東北学院大学, 経済学部, 助教授 (40133920)
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Keywords | 納税者の反乱 / 新連邦主義 / 地方分権 / ブロック補助金 / プロジェクト型補助金 / 福祉国家 |
Research Abstract |
経済個人主義が非常に強い「福祉国家後進国」アメリカは、60年代の「偉大な社会」計画を契機にして従来のコ-スから逸脱しかけた。すなわち、社会保障関係の財政膨張と経済個人主義のエ-トスの衰退との両方を招いたのである。 かかる逸脱に対する最も敏感な反応は、カリフォルニア州における1978年の「提案13号」に代表されるような「納税者の反乱」であった。レ-ガンの新連邦主義構想は、納税者の反乱にみられるようなアメリカ国民の広汎な反福祉感情を背景にして生まれた。それゆえ、新連邦主義はレトリックとしては地方分権を大きく掲げているものの、本来の目的はAFDCや食料切符といった「ウェルフェア」と呼ばれる生活保護的な福祉事業の削減にあった。しかし、この新連邦主義構想は様々な要因によって実現しなかった。 かかる構想には失敗したものの、レ-ガン政権は補助金の大幅な削減と補助金精度の再編については相当な実績を残した。この制度再編の中で最も重要なものは、特定補助金のブロック補助金化とプロジェクト型補助金の目的意識的な削減である。これらの措置は、州・地方政府の予算の優先順位に影響を及ぼした。州・地方政府は増税よりむしろ貧困者向けの福祉サ-ビスを削減することによってかかる行動に対応した。 予算規模はさほど大きくないものの、潜在的には財政膨張の強力な要因となり、また経済個人主義エ-トスを侵食するガン細胞のようなものであるとみなされていた補助金を目的意識的に削減することによって、レ-ガン政権は予算と連邦官僚制の中にビルト・インされていた福祉国家化傾向の進展の阻止に成功した。よって、新連邦主義構想の政策意図は規模を縮小しながらもほぼ実現したといいうる。
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