1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63540154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 陽一郎 東京大学, 教養学部, 教授 (20033889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 洋 東京大学, 教養学部, 助手 (50192125)
伊藤 達夫 東京大学, 教養学部, 助手 (20151516)
岡本 久 東京大学, 教養学部, 助教授 (40143359)
北田 均 東京大学, 教養学部, 助教授 (40114459)
谷島 賢二 東京大学, 教養学部, 助教授 (80011758)
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Keywords | 大偏差原理 / エントロピー / カオス / 解の爆発 / 容量 / 臨界現象 |
Research Abstract |
強両帰性を持つ確率過程を主対象としたDonskerと aradhanの理論を出発点とする大偏差原理が、コンパクトな力学系へも拡張でき、カオスに対するギッブス型変分原理の証明にも応用できるという成果に引き続いて、本年はより広い対象、とくに数理物理的な対象、の中における大偏差原理の諸例を見出し、その役割の把握をすることが目的であった。 当初の目標として揚げた、非再帰的な確率過程に対する大偏差調関数と静電容量との関係については、不変測度の存在を仮定すれば、不等式の成立することが確められた。さらに、一般には不等式の成立しないことも予想でき、また、散乱距離(scattering length)を用いればより一般化できる可能性のあることも見出された。なお、等式の成立するための条件は今後の課題である。(発表準備中) カオスの問題に関連して、Li-Yorkeのカオスの定義に現れるscramble setは、与えられた力学系の測度論的エントロピーが正である限り、もし可測集合であるならば、測度零であり、また力学系が概周期的であるならば、正測度をもつ可測集合でなりうるという事実を発見した。久保泉氏(広島大)はさらに、外側度1のscramble setはつねに存在することを超限帰納法を用いて示した。(共著として発表準備中) 一方で、ある種の半線型拡散方程式の解の爆発問題に対する、儀我-Kohnの結果は、実は分枝過程に関する大変特殊な大偏差問題であることが判った。同時にそれは、統計物理学における臨界現象のひとつでもあり、この見方から、この解の爆発問題は、無限次元力学系の退化した不動点における安定多様体の存在問題であることが発見でき、現在までには、発見的議論によってではあるが、爆発解の存在証明の可能性が見出された。さらに、通常の有限次元力学系とのアナロジーが成立すれば爆発点におけるより詳しい情報を得ることも期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kenji,Yajima: Joural of Mathematical Souety of Japan. 41. 117-142 (1989)
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[Publications] H.Okamoto: Non linear Analysis,theory and numerical analysis.
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[Publications] Tatsuo,Itoh: prepint.
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[Publications] 高橋陽一郎: 日本物理学会誌. 44巻. (1989)
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[Publications] 高橋陽一郎 江沢洋、小嶋泉 編: "数理物理学の展開 第2章「力学系における決定性と非決定性」" 東京図書, 51-79 (1988)