1990 Fiscal Year Annual Research Report
高精度分光による赤色起巨星外層の物理過程及び化学過程の研究
Project/Area Number |
63540187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 隆 東京大学, 理学部, 教授 (20011546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 英男 東京大学, 理学部, 助手 (40126074)
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Keywords | 高精度分光 / 赤色起巨星 / CCD / フ-リエ変換分光 / 化学組成 / 同位元素組成 / 乱流 |
Research Abstract |
1.高解像CCDによる特異炭素星の ^<12>C/ ^<13>C比 さきに岡山天体物理観測所のク-デ分光器に導入されたRCA高解像CCDにより炭素同位体組成比の決定を進めた。炭素星で代表されるAGB星の進化の詳細はなお未解決の問題が多いが、特に最近のIRASデ-タにより発見された炭素星でありながら酸素過多のcircumstellar envelopeの特徴であるシリケ-ト赤外放射を示す星は、炭素星の進化を理解する上で重要な鍵であると思われる。これらはすべてJ型星であることが示されているので、シリケ-ト赤外放射を示す炭素星を含むJ型星の ^<12>C/ ^<13>C比の詳細な検討を行なった。その結果、J型星では ^<12>C/ ^<13>C比は2〜10の範囲に分布しているが、シリケ-ト赤外放射を示す炭素星では ^<12>C/ ^<13>C比はほぼ10であることが分かった。即ち、これらシリケ-ト赤外放射を示す炭素星の ^<12>C/ ^<13>C比はJ型星における ^<12>C/ ^<13>C比の分布の上限に位置することが明らかとなった。このことはこれらシリケ-ト赤外放射を示す炭素星の進化過程に関し新たなる観測的制約を与えるものでり、今後さらにサンプルを増やして確認するための観測を行う必要がある。 2.FTS分光による赤色巨星・超巨星の化学組織精密定量解析 赤色巨星の高分解能赤外スペクトルにより、光球で形成されたと考えられるCOの第1倍振動の高励起線及びCOの第2倍振動についてスペクトル線偏移および線輪郭の精密測定を行った。このような光球大気で形成されると考えられる吸収線にはスペクトル線強度に依存する相対偏移及び0.5km/secに達する非対称性の存在が示された。このようにスペクトル線輪郭は著しい非対称性を示し、さらに視線速度は大きな速度勾配の存在を示すことから、従来用いられていた深さによらない等方的ガウス型の乱流スペクトルを仮定したモデルでスペクトル線の定量解析を行うことは困難であることが明らかとなった。こにような乱流モデルにより不確定性を避けるため飽和効果を示さない弱いスペクトル線を用いるて元素組成の精密決定を行った。その結果、赤色巨星段階にあるM型巨星(M_<bol>>ー3)では炭素組成はGーK型巨星とほぼ同じで[C/H]=ー0.3であり、これはいわゆるfirst deredgeーupで説明できる可能性の範囲にある。しかし、AGB段階にあるM型巨星(M_<bol><ー3)では炭素組成はさらに減少して[C/H]=ー0.6となりfirst及びsecond dredgeーupでは説明できない。 これらの結果から、赤色巨星段階からAGB星段階への進化過程で再びCNOサイクルによる生成物が多量に星の表面に混合される過程が必要とされることが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Tsuji: "High resolution spectroscopy of CO in the infrared spectra of cool stars III.Line intensities,shifts,and asymmetries as probes of stellar turbulence and abundance in oxygenーrich giant stars" Astronomy & Astrophysics. (1991)
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[Publications] T.Tsuji: "CNO abundance evolution along the Mーgiant sequence:Implication for dredgeーup" Proc.IAU Symp.no.145 on “Evolution of stars:Photospheric abundance connection". (1991)
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[Publications] BurE.Turner: "Phosphorus in the dense interstellar medium" Astrophysical Journal. 365. 569-585 (1990)
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[Publications] G.Piehler: "Optical pumping of circumstellar CO maser" Astronomy & Astrophysics. (1991)
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[Publications] K.Saijo: "Photoelectric observation of ZZ Psc" Bulletin of the National Science Museum. 13. 1-8 (1991)
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[Publications] H.Sato: "A unique photoelectric photometer for small telescope" Journal of the AAVSO. (1990)