1988 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法による酸化物高温超伝導体の磁性と超伝導の競合に関する研究
Project/Area Number |
63540267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
熊谷 健一 北海道大学, 理学部 (70029560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 春雄 北海道大学, 理学部, 教授 (10000796)
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Keywords | 核磁気共鳴 / 核スピン緩和時間 / 酸化物高温超伝導 / 磁気秩序 |
Research Abstract |
酸化物超伝導体では、電子スピンのゆらぎや電荷のゆらぎがその超伝導発現機構を担っている可能性もあり、超伝導相に隣接して存在する反強磁性相の性質、およびそれをもたらすスピン相関の知見を得ることは極めて重要なことと考えられる。本研究においては、各原子サイトにおける微視的電子状態の知見を得るべく、核磁気共鳴法により、核スピン緩和時間等の測定をおこない、以下の成果を得た。 1.最もシンプルで典型的酸化物超伝導体であるLa_<2-X>MxCuO_4(M=Ba、Sr)系において、ホール濃度を変化させ(Xを変え)^<139>La-および^<63/65>Cu-NQR(核四重極共鳴)を観測した。超伝導相と反強磁性相の間に、核緩和率の異常を伴う新しい磁気相を発見した。ホールを注入することにより、系のCuスピン間にホールを媒介とした強磁性的相互作用が生じ、フラストレートした反強磁性秩序相が生じていることを示している。 2.濃度X>0.2以上の領域で、Cu-NQR信号を観測することに成功し核スピン緩和時間等を測定した。Xの大きい正常領域では、T_1・T=constのKorringa関係が広い温度範囲で成り立ち、系は金属的であることがわかった。一方超伝導状態では、超伝導転移温度以下で、T_1は急速に長くなり、超伝導エネルギーギャップによりスピンのゆらぎが抑えられる。T_1の温度依存性は、他の酸化物超伝導体YBa_2Cu_3O_7系やBi系のそれと全く類似の変化であり、これらの系における特徴的な超伝導エネルギーギャップの存在を示している。 3.Cu-NQRスペクトルの解析から、La系げはホール濃度とともにCuスピンの大きさが小さくなり、その小さな磁気モーメントは、超伝導状態で磁気オーダーをおこしていると考えられる。この結果は、極低温比熱にあらわれる核schottky比熱の解析からも支持される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 熊谷健一: Physica. 152C. 286-288 (1988)
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[Publications] 渡辺功雄: J.Magnetism and Magnetic Materials. 76&77. 599-600 (1988)
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[Publications] 熊谷健一: Jpn.J.Appl.Phys.Series 1. 1. 37-41 (1988)
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[Publications] 熊谷健一: Physica. 157C. 307-314 (1989)
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[Publications] 大芦敏行: Physica. 157C. 315-319 (1989)
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[Publications] 和田信雄: Physica. 157C. (1989)