1988 Fiscal Year Annual Research Report
光散乱による高分子ゲルのスビノーダル分解と弾性不安定性の研究
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63540272
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
弘津 俊輔 東工大, 理学部, 助教授 (40016069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 郁夫 横浜国立大学, 教育学部, 助手 (70126332)
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Keywords | 高分子ゲル / ゲルの体積相転移 / ゲル-ゲル転移 / スピノーダル分解 / 弾性不安定性 / 光散乱 / ブリルアン散乱 / 弾性定数 |
Research Abstract |
当初の予定通り、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)/水ゲルのスピノーダル分解(SD)及びブリルアン散乱の測定を行い、更に表面SDと深い関係を持つ表面パターン形成の研究をも行った。 光散乱測定によるSDの研究においては、不安定となる温度及び不安定ゆらぎの波数が明確に異る、2種のSD機構が一つのゲル中に共存する事が分かった。これらは、ゲルの表面及び内部のSDに対応すると考えられる。ゲルにおいては、膨潤・収縮過程で、表面と内部とでは全く異なる変形状態が実現するために、SD機構も異るものとして、この現象が説明できる。一つの物質の表面と内部とで、異る機構によってSDが起こる事が確認されたのは、これが初めてであろう。 ブリルアン散乱の測定は、体積相転移温度(To=33.6℃)を含む、25〜40℃の温度範囲で行い、測定結果からゲル中を伝播する音波の速度及び吸収係数を、温度の関数として決定した。音速・吸収係数共にToで明瞭なとびを示すが、これはゲルの体積相転移に伴う弾性異常のデータとしては、始めてのものである。又、結果の解析から、高分子網目の高周波弾性率及び、網目と溶媒との間の摩擦係数が、温度の関数として求められる事が示されたが、解析の基礎となる理論的モデルには未だ不備な点があり、これを完全にする事が、来年度への課題である。 ゲルが、大幅な膨潤又は収縮を行う際に、その表面に複雑で多様なパターンが現れる。パターンの形成とその時間発展は、統計力学的見地からも興味深いが、パターン発現の原因は、表面の弾性不安定性にあると考えられる。我々は、パターンの時間発展を調べ、パターンの特徴的長さlが時間の指数則に従う(l〜t^α)事を見出した。αの値は、外部条件に依存する。αの物理的意味を明らかにする事及び、αの値とSDの測定結果との関連を明らかにする事が、次年度の課題である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] S.Hirotsu;A.Kaneki: Dynamics of Ordering Processes of Condensed Matter. 481-486 (1988)
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[Publications] 弘津俊輔: 物性論研究. 50. 410-419 (1988)
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[Publications] I.Yamamoto;K.Iwasaki;S.Hirotsu: J.Phys.Soc.Japan. 58. 210-215 (1989)
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[Publications] S.Hirotsu;A.Onuki: J.Phys.Soc.Japan.
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[Publications] S.Hirotsu;A.Kaneki;K.Iwasaki;I.Yamamoto: Cooperative Dynamics in Complex Physical Systems(Springer Series in Synergetics,Springer,1989. (1989)